「そっか。で、さっきの『指を向けるな』っていうのは、どういう――」
チョコの件を後回しにして、一つずつ質問していく。
「ああ、それは気にしなくていい」
言い終わる前に拒絶される。これ以上は聞けない雰囲気だ。
「じゃあ、弓槻くんと伊凪くんはどういう関係なの? 質問ばっかりになっちゃって申し訳ないんだけど」
気になっていたことを尋ねてみた。
「洸は俺と同じ中学校出身だ。今はオカルト研究同好会の幽霊会員になってもらっている。名前だけ借りているといった感じだな」
「へぇ」
「たまにこの部室に勉強しに来るんだ」
弓槻くんにも友達がいることに、少し安心した。
それと同時に、周囲には知られていない弓槻くんの優しさや頼もしさを、私よりも前から知っている人がいたと思うと、なぜか胸の奥にもやもやした気持ちが湧いた。
「この時期に勉強なんて、すごく向上心があるんだね」
言ってから、嫌味っぽくなってしまったのを少し後悔する。
普通の生徒はテストが終わって気を抜くような時期であるにも関わらず、彼は勉強する時間が必要だと言う。学生としては模範的かもしれないけど、少し寂しいような気もした。
「あいつは、医者になるんだそうだ」
「医者……」
思いもよらなかった単語の登場に、私は困惑する。