「ごめん、遅くなっ――」

 オカルト研究同好会の部室の扉を開けると、そこにはすでに先客がいた。
 私は口をつぐむ。

「……あ、えっと……」

 いつも弓槻くんが座っている位置には、銀縁のメガネをかけた男子生徒が座っていた。

 肌は青白く、目の下にはうっすらと隈が見える。
 全体的に不健康そうな印象を受けた。

 ギロリ、と睨まれる。

 見覚えがあるようなないような……。誰だっけ。
 最近、会ったような気もするけど、なかなか思い出せない。

 いや、それどころではない。

 狭い部屋に、話したこともない怖い男の人と二人きりなんて、とてもじゃないけど耐えられない。私は入口になるべく近い位置に立つ。

 男子生徒は、私から視線を外して壁をじっと見つめていた。
 どうやら、私と会話する気はないらしい。好都合だ。

 とにかく、この状況から一刻も早く逃げ出したい。けれども何も言わないで出ていくのも不自然だし……。
 怖さと情けなさが同時に押し寄せる。

 沈黙に痺れを切らして、無言で部室から出ようとしたとき、段ボールの奥から弓槻くんが現れた。

「ああ、来てたのか」

 私を見て一言。