「ありがとね、琴葉。……琴葉? お~い」
「……あ、うん」
「どうしたの、ボーっとしちゃって。これからまたオカルト研究するんでしょ?」
「そう……だね。じゃ、行ってくる」
私は苦笑いで答える。
「おう、前世の恋人探し、頑張れよ」
周りに聞こえないように気を遣った小声での応援を受け、私は弓槻くんの待つオカルト研究同好会の部室へと向かった。
廊下を歩きながら、私は悩みに悩んでいた。
どうしよう。さっき、榮槇先生に助けてもらったときの感覚……。
間違いない。月守風香が、初めてシロちゃんと会ったときと一緒だった。
私は立ち止まって、両手で顔を覆う。
ああ、どうしよう。
私は、榮槇先生に恋をしてしまった。
運命の人を探している最中、私は別の男性を好きになってしまったのだ。
しかも、一回り以上も年上の男性。生徒と教師。問題しかない。
ここにきて、悩みのタネが増えた。
それは、とてつもなく大きな一粒だった。