教室に戻ってきた。
本格的に夏休みに突入したこともあり、騒がしい。
出された宿題の割り振りを行う男子や、合コンのセッティングを始める女子。
複数の話題が生まれて、あちらこちらを飛び交い、消えたり混じったりを繰り返す。
私は、今日もオカルト研究同好会の部室に行くことになっている。
「鳴瀬琴葉さん」
藍梨が恭しげに、フルネームで私を呼んだ。
「はい、なんでしょうか」
私も合わせるように答える。
藍梨がこの呼び方をするのは、決まって私に頼み事をするときだ。
「今日って、夏休みが始まるっていう、一年の中でもかなり上位に入るハッピーな日じゃない?」
「まあ、そうだね」
よくわからないまま、うなずいておく。
「そんな日に私、日直なのよね。ああ! なんて不幸な女なの⁉」
藍梨は大げさに両手を広げ、天井を仰ぐ。
「ってわけで、これ、職員室に運ぶの、手伝って欲しいんだけど……」
藍梨が示した先には、四つの段ボール箱。
「わっ、大変そう。手伝うよ」
私は引き受ける。
「弓槻くん、今日ちょっと遅れるね」
机の中の荷物を鞄に移している彼に、小声でそう伝える。
「手伝うか?」
弓槻くんは私たちと段ボールを交互に見ながら言った。
「いや、大丈夫よ。そんなに重くないし、琴葉と二人で運べそうだから」
「そうか。わかった」