「結婚して不幸になるのなら、どうして人は人を好きになるんだろうって、ずっとそう思ってた。でも、人を好きになることに理由なんてないんだね。こんな当たり前のことに気づけたのは、風香のおかげだよ。だから、この涙は嬉し涙なんだ」
無理をしていることは明白だった。
だからわたしは、こう言ったのだ。
「大丈夫。わたしとシロちゃんは、絶対に幸せになる」
根拠はなかったけど、確信はあった。
「ありがとう、風香」
――起床。
私はすぐに枕元のノートにペンを走らせる。
あまりロマンチックとは言えないような雰囲気での、突然の告白。それでも、頬は熱を帯びる。
新しく記憶を思い出すたびに、私自身がシロちゃんにひかれていくのがわかる。
月守風香の、シロちゃんに対する想いの強さも再確認できた。
彼女のためにも、私は運命の相手に出会わなくてはいけないと、そう思った。
でも、シロちゃんの両親が離婚しそうなのがシロちゃんのせいって、どういうことだろう。
月守風香はその理由を把握していたみたいだったけど……。
記憶が増えても、謎は多くなる一方だ。