「……ねえ、シロちゃん」

 どうしようもなく、この人が愛しい。

 今言わなくちゃ。この気持ちは、今伝えないと、絶対に後悔する。根拠はないけれど、そう思った。

「ん?」

 問題を解き終わったようで、シロちゃんは一度顔を上げた。

 わたしは、その顔をじっくり三秒ほど見つめる。
 シロちゃんも目を反らすことなく、わたしのことを見ていた。

「好きだよ」

 愛という世界で最も不確かな感情は、わたしの心の奥底から喉へと伝わり、四つの音となって口から漏れた。
 不思議と、照れはなかった。

 拒絶されたら悲しいなとか、気まずくなったらどうしようとか、そういったことも考えなかった。

 ただ、伝えなくちゃ、とだけ思った。

「僕も好きだよ」

 シロちゃんは微笑んでそう言った。

 驚くでも戸惑うでもなく、当たり前のようにわたしの言葉を受け止め、同じ言葉を返してくれた。

 キャッチボールのように、わたしがシロちゃんに投じた〝好き〟がそのまま返ってきたわけではなく。

 わたしの〝好き〟はシロちゃんが、シロちゃんの〝好き〟はわたしが受け取った。

 わたしたちはたしかに、〝好き〟を交換したのだ。

 同じ気持ちであることが、どうしようもなく嬉しい。

 わたしは、この世界の誰よりも幸せだと思った。