いつ死んでもおかしくない状態のわたしを生かしているのは、すぐそばにいるシロちゃんの存在だけだった。

「うん。僕も大丈夫」

 けれどもシロちゃんの声は、微塵も不安を感じさせることなく、わたしに届く。

 彼の言葉は、まるで魔法だ。

 シロちゃんが言ったことは、本当にその通りになる。

 そんな確信が、わたしにはあった。

 だから、彼が大丈夫だと言えば、それは大丈夫なのだ。

 シロちゃんは血に濡れた右手を震わせながら持ち上げ、わたしの頭の上に置く。

「僕らはまた、出会える。何度生まれ変わっても、また。だって、風香と僕は……赤い糸で……繋がっている…………から」

 シロちゃんの視覚は、わたしを捉えていなかった。頭からどくどくと流れる血で、目を開けることを許されないのだ。

 それでも――シロちゃんの心は、わたしだけを見ていた。

 抱きしめたい。そう思った。

 首から下のどの部分も動かすことさえ許されない今の状況では、到底無理な話だったけれど。

「どうすれば……会えるの?」

 死んでも、またシロちゃんと一緒にいたい。その一心だった。

「……十五年と五ヶ月後。嶺明高校で、二人は再会するんだ。見知らぬ他人同士だった二人は……運命に導かれて、ひかれ合う。だから……ちゃんと生まれ変わったら、僕に…………会いに……来て……」

 シロちゃんの声はそこで途切れた。

 わたしの頭に乗せていた右手も、力を失って地面に落ちる。

「……シロちゃん。シロちゃん⁉ 嫌だ……。嫌だよ! シロちゃん⁉」

 そうしてわたしは、声が出なくなっても、彼の呼吸が止まっても、自分の命が果てるまで、最愛の人を呼び続けた。