「さて、いくつか質問をさせてもらってもいいか」
しばらく黙っていた弓槻くんが口を開いた。
「うん。大丈夫だよ」
「猫は好きか?」
ストレートな問い。
「猫……か。実は、動物は苦手なんだよね」
その答えに、私と弓槻くんは顔を見合わせる。
「それは昔からか?」
「うん。俺は少し潔癖症気味なところがあって、どうしても動物に触ったり近づいたりできないんだ」
「なるほど、潔癖症か」
弓槻くんがタブレットに書き込みをする。
「普段の生活にはあまり支障はないけどね。それで、俺が猫を好きかどうかってことに何か意味があるの?」
三人目にもなると、そんな質問をされても私ですら動じない。
「ああ。実は、霊力の高い黒猫がこの辺りに出るらしいんだ。猫好きの人間に取り憑く可能性がある。苦手なら問題ないとは思うが、注意するに越したことはない。気を付けてくれ」
毎度お馴染みの作り話。それを聞いて、與くんは戸惑い、燈麻くんは相手にせずやり過ごした。普通、反応はそのどちらかになるはずである。
しかし仙田朔矢は、そのどちらとも違っていた。
「へえ。黒猫って、なんだかそういう力ありそうだもんね。気を付けるよ。ありがとう」
弓槻くんの大嘘を、笑顔であっさりと受け入れたのだ。