「ちょっと。あんまり喋らないでよ、叔父さん。恥ずかしいなぁ」

 そこへ、ちょうど休憩に入った仙田くんがやって来た。

 仙田くんは店の制服姿のまま、私たちの向かい側に腰を下ろした。

「まあまあ、いいじゃないそのくらい。それじゃ、ごゆっくり」

 マスターは、そう言って踵を返す。

「まったく……。ごめんね、余計な話に付き合わせちゃって」

 非常に物腰が柔らかく、落ち着いている。老けているとかそういったことではなく、普通の高校生にはないような大人っぽさがあるのだ。
 これも叔父であるマスターの影響だろうか。

「いや、そんな。ちゃんと将来のこととか考えてて、すごいなって思いました。私なんか、何もなくって……。あっ、えっと、二年三組の鳴瀬琴葉(ことは)です。弓槻くんの助手みたいなことをやってます。よろしくお願いします」

 自己紹介が変なタイミングになってしまった。

「弓槻くんから聞いてるよ。仙田朔矢です。こちらこそよろしくね、鳴瀬さん」

 私に向けられた柔和な笑みはやはり大人びていて、不覚にもドキッとしてしまう。

 動揺するな。バーテンダーの仕事で身に付けた営業スマイルに違いない。