「あの、私にもわかるように説明してほしいなぁ……なんて」

 これじゃあまるで私が頭の悪い子みたいじゃないか。まあ、弓槻くんに比べればそうなんだろうけど。

「悪魔、地獄、天使、愛。それぞれ英語でなんという?」

 弓槻くんが問いかける。どうやら、私にも理解できるように解説してくれるらしい。

Devil(デビル)Hell(ヘル)Angel(エンジェル)、えーと……Love(ラブ)?」

 英語なら数学よりは得意だし、そもそもこのレベルなら中学生でも答えられる。

「その頭文字を並べると?」

D(ディー)H(エイチ)A(エー)……あっ! 『D-HAL』!」

「その通り。そのままだと読みにくいから、ハイフンを入れたけどね。ただの言葉遊びって言われてしまえばそれまでだけど、僕は気に入ってるんだ」

 マスターが誇らしげに言う。名前だけじゃなくて、この店の全部が好きなんだということが伝わってくる口調だった。

「でも、このコーヒー、本当に美味しいです。愛を知ったときに、きっとこの味を思い出します」

 勢いで言ってしまったけど、かなり恥ずかしい発言だった。言い終わってから気づく。けれど、マスターは笑わずにうなずいてくれた。