ところが、運命はあまりにも残酷だった。
二人の愛は今にも、〝死〟という、どうあがいても乗り越えられない絶望によって引き裂かれようとしていた。
「わたしたち、どうなるの?」
あふれ出す不安から、わたしは答えのわかりきったことを聞いてしまう。
シロちゃんからは、わかりきった答え。
「このままじゃ……僕も風香も、死んじゃうだろうね」
言い終わると同時に、口から赤い液体を吐き出す。ドロリとした血液が、瓦礫の山に染みを作る。
「シロちゃん⁉ 血が……」
大きな声を出したつもりだったが、わたしも相当なダメージを負っているらしく、かすれた声しか出てこなかった。
「僕は問題ないよ。血なら誰からでも貰えるから。それよりも、風香が心配だよ」
「わたしは、大丈夫だよ」
無理やり絞り出した明るい声は、むなしく宙に舞って、儚く消えた。
まったく大丈夫なんかじゃないし、このままでは死ぬだろうということもわかっていたけれど、目の前にシロちゃんがいたから、どうにか平常心を保っていられた。
肉体に痛みは感じなかった。これが、痛くなくてよかったと喜ぶべきなのか、死へ近づいているのだと悲しむべきなのか、わたしにはそれすらも判断できなかった。
とにかく、このときすでに、わたしの体に痛みを司る感覚は残っていなかった。
それでも、たしかに痛みを感じた。心が痛かった。最愛の人と離ればなれになってしまうという喪失感が、わたしの心をズタズタに痛めつけていた。