知らなかった、お前をこんなにも好きになるなんて…


母親は冷蔵庫からビールを取り出しプシュっと開けて1口飲む

「あー、おいし!で?何で怪我したの?」

「教室で転びそうになった女子を助けようとして、支えきれなくて手首を床についちまった」

「女の子に怪我はなかったの?」

「うん……部活のマネージャーなんだよ

で、たいしたことないから部活も行くつもりだったんだけどまあ、やりとりしていたら稔が愛美を呼んでくれたみたいで愛美に保健室に連れていかれた」

「まあ、左手だから部活に出ても出来ることはあると思うけど……マネージャーが気を遣うわよ、休んで正解じゃない?明日病院に行く?」

「朝起きてから決める」

玄関の開く音がした

「ただいま、斗真の靴があると思った、どした?」

愛美がシャワーから出てきた

「あっ、お帰りなさい」

「ただいま、愛美ちゃんだけ?」

「斗真が怪我して愛美ちゃんがお世話してくれたのよ、私も今帰ってきたところよ」

「斗真、怪我したのか」

「うん、手首の捻挫、たいしたことない」

幸司朗に見せた

「部活で?」

「教室で女子を支えれなくてこけた」

「まあ、愛美ちゃんが軽いから他の女は重いぞ(笑)」
「確かに(笑)結構体格いい子だったし」

「じゃあ、シャワーしてくる、明日は8時に出るから」

「わかった」

「愛美、俺らも上行こ」

「はーい、おやすみなさい」

斗真の部屋を開けると愛美の制服があちこちにあった

「あっ、着替え急がなきゃと思って脱ぎっぱなしだった」

「ハンガーかけとけよ」
「うん」

斗真はベッドに横になった

「はぁ……」

「どうしたの?ため息なんかついて」

「うーんドジったなぁと思って……」

「捻挫ですんだんだからいいじゃない、助けたんだから仕方ないよ」

「でもな……何か……」
「ん?」

愛美は斗真のベッドに座り壁にもたれて携帯を開く

「俺の席の近くに河原のグループがいつもいるような気がするんだよなー」

「斗真は白方くんの席に行ったりしないの?」

「いや、行く時もあるけど、その時も近くにいるような……」

「河原さんも何人かでいるんならおかしくはないけど……私は華と前後だからほぼ動かないからね(笑)」

「今日もさ、河原がこけたのは友達が軽く押して……気のせいかなー」

「河原さんがいじめられてる?」

「そういうことじゃなくて……」
「ん?」

愛美はキョトンと斗真の方を見た

「いや、考えすぎかな、いいや」
「うん」

愛美は鈍感だから気づかないか……