愛美達は惜敗した
「茜、ごめん、道具持って上がってて」
「……愛美?」
「顔洗ってから上がるから……」
茜に告げるとトイレに行き顔を洗ってから反対側の階段を上り斗真の服を後ろからつまんだ
斗真と愛美はカーテンの後ろに隠れた
「くやしかった」
「よく頑張ったよ、団体の時より凄い試合で、すごい長いラリーもあって、俺手汗がやばかったから……」
愛美は斗真の胸に軽く頭をつけた
ぐすっ、ぐすっっと鼻をすする音がする
まあ、泣きたいよな
愛美の背中をポンポンと叩く
「泣きやんで、そんな顔後輩に見せるのか?」
愛美は首を横に振った
「止まらない、もう少し……」
斗真は優しく叩いていた背中をぎゅーっと抱いた
「汗臭いから……」
「愛美が頑張った証拠だし、俺は気にしない」
「もう、大丈夫……」
愛美は斗真の胸を押して少し離れた
「終わったら俺ん家においで、金曜日だし、母さんにも言っとくから」
「うん、わかった」
「じゃあ、みんなの所に戻れるな?(笑)」
愛美はタオルで汗と涙を拭いながらカーテンから出た
「ごめん、後で……」
小走りでみんなの所へ戻ると後輩達からお疲れ様ですの声が次々と耳にはいってくる
「ありがとう」
茜の隣に座ると
「次の県大会がんばろ!」
と声をかけてくれた
「うん、初めて悔しいと思った」
正直今日の対戦相手は小学校の時から何回も対戦はあったが愛美は細身でパワーがない
もう負けても仕方がないと諦めていたところもあった
斗真の応援と試合が接戦になったことから
穏やかな性格の愛美にもそういう気持ちが出たのかもしれない