知らなかった、お前をこんなにも好きになるなんて…


6年後の野球場
愛美はフェンス越しに斗真と話していた

「予定通り投げる?」

「うん、投げるよ」

「これ、今日来る前に撮った写真」

「おー、かっこいいな」

「今、ママ達が着替えさせてる(笑)」

ヨチヨチ歩きの両手を2人の婆ちゃんが手を繋いで歩いてきた

「やべぇ、可愛い」

斗真のチームのユニフォームをママが作ってくれて着替えさせていた

「橋本さーん、チームの帽子持ってきて、ジュニア用」

「はい」

「ジュニア用でも大きいよ」

「いいよ、つばを横にすれば」

「どうぞ」
「ありがとう」

「広報用に御家族の写真撮らせてもらっていいですか?」

「いいよ」

「悠真(ゆうま)おいで」

愛美は悠真を抱っこした

「母さん、これ悠真に被らせて」

フェンスをこえて投げる

「はい、被った(笑)」

「いいよ、撮って」

カシャ!

「じゃあ、頑張ってね」

「うん、悠真〜」

斗真はフェンスから指を出した

悠真はギュッと握った

「わかってんのかねー、お前は(笑)」



試合開始の時間になり先発が発表されていく

「ピッチャー、嶋本斗真」

観客と一緒に拍手をした

悠真を膝に乗せていた愛美は悠真の手に力が入ったことに気づいた

「悠真、パパだよ〜」

「パ……パ」

「そう!偉いね悠真、言えたね」

愛美は携帯を出して動画ボタンを押した

「パパって言って、悠真、せーの」

「パーパー」

みんなの拍手を真似して両手をぱちぱちとたたいた

「きゃ〜可愛い……」

動画ボタンを止めて悠真の手を握る




ねえ、悠真、今日帰ったらたくさんパパって言えるかな

きっとパパはママの大好きなクシャっとした笑顔になるよ



愛美は悠真をギューっと抱きしめた


END