ベートの知らせに、町中が緊張状態。
戦える人間は武器を持ち、町の入り口近くへ駆り出されているが、明らかに戦力が不足していた。
元凶のライオネルは怯えて使い物にならず、町には絶望感が漂っている。
現在は日が傾き始めたころ。魔物は日暮れから活発になる。
明るい今は現れる魔物も少ないが、夜になればおそらくは一斉に襲い掛かってくるだろう。
そのときは、この町はもうひとたまりもない。
「どうしましょうベートさん……」
アレクは、自分が何の力にもなれないことを歯がゆく思っている。
ベートは町の様子を眺め、覚悟を決める。
「料理を作るぞ」

町中の人に振るまうため、ベートは広場で盛大に料理をする。
料理には特性を付与する。竜種の炎に対抗するための炎耐性、戦えない女子供には防御力強化や敏捷強化、戦う男たちには腕力上昇など。
町の人々は「本当に大丈夫なのか」と不信感を抱いているが、それをアレクやエレナが説得する。
「獣人風情が」と馬鹿にする人もいたが、奴隷商の一件で助けられた親子も一緒に説得してくれて、町の人たちが徐々に受け入れ始める。

町の人たちの説得が終わったころに、「手伝うことありませんか?」とアレクが尋ねる。
「ああ、お前にはどうしても手伝ってもらいたいことがある」
ベートは町中の人たちを見て、竜種に対抗できる人間がいないことに気付いていた。
(可能性があるとすれば……)
今は弱くとも、輝かしい才能を秘めたアレクくらいだろう。そう思い、彼は最後に残っていたレベルブーストの保存食をアレクに渡す。

料理が終わり、町の人たちに食事をするうちに、日が暮れ始める。
不穏な気配が増す中、突然の吠え声が響き渡る。
魔物が現われたのだ。

町は騒然とする。最初は怯えて絶望していた町の人々だが、料理による『特性』の影響で魔物に襲われてもダメージがほとんどないことに気が付き、盛り返す。
反撃を開始する町の人々。
一方のライオネルは、ベートへの反発心から料理を食べていないため、必死に逃げ回る羽目に陥っている。
町の人々が優勢に戦う最中、洞窟のボスである竜種が現われる(このとき、鳴き声が二重に聞こえている)。
『特性』を付与されても竜種には勝てず、再び絶望感が漂う中、レベルブーストしたアレクが飛び出す。
町の人々の応援を受け、奮戦の末に勇者の力である『女神の加護』にて討伐。
が、それと同時にもう一体の竜種が現われる。
騒然とする中、竜種はエレナに狙いを定めて襲い掛かってくる。
アレクは慌てて駆け戻ろうとするが間に合わない。
ベートは咄嗟に包丁を抜き、竜種の急所を突いて討伐する。
彼は最強の特性付与料理人として知られた、『戦闘料理人ベルトルード』本人であった。
二匹の竜種を倒し、ベート達は町を守りきる。
大歓声。