次の日のお昼休み、僕は何をすることもなく自分の席に座っていた。
誰かと喋る気も、落書きをする気も起きず、ただ窓の外をぼんやりと眺めていた。
今日は部活に行くべきか。それとも、もう一度河川敷に行ってみるべきか。
頭の中で選択肢がぐるぐる回るけれども、判断を下すだけの気力は湧いてこない。
抜け殻のように、ひたすら時間の経過を待つ。
表情筋がどんどん動かなくなっていく。
そんな僕に、話しかけてくる声があった。
「篠崎くん、どうしたんだい?」
「あ、水島くん」
図書室から戻ってきたらしい。難しそうなハードカバーの本を五冊抱えている。
「ここ数日、様子がおかしいよ」
「ありがとう。うん、ちょっと疲れてて」
「何か困ったことがあったのなら、僕に話してくれないか」
水島くんがそう言って、前の席に座ってきた。
「ほんとになんでもないって……」
「最近読んだ心理学の本にこう書いてあったんだ」
講義調の声が、ごまかしを遮った。
「嘘をついている人間の目は、左右によく泳ぐってね」
ほこりひとつないメガネの奥、精密な思いやりが僕を見ていた。
誰かと喋る気も、落書きをする気も起きず、ただ窓の外をぼんやりと眺めていた。
今日は部活に行くべきか。それとも、もう一度河川敷に行ってみるべきか。
頭の中で選択肢がぐるぐる回るけれども、判断を下すだけの気力は湧いてこない。
抜け殻のように、ひたすら時間の経過を待つ。
表情筋がどんどん動かなくなっていく。
そんな僕に、話しかけてくる声があった。
「篠崎くん、どうしたんだい?」
「あ、水島くん」
図書室から戻ってきたらしい。難しそうなハードカバーの本を五冊抱えている。
「ここ数日、様子がおかしいよ」
「ありがとう。うん、ちょっと疲れてて」
「何か困ったことがあったのなら、僕に話してくれないか」
水島くんがそう言って、前の席に座ってきた。
「ほんとになんでもないって……」
「最近読んだ心理学の本にこう書いてあったんだ」
講義調の声が、ごまかしを遮った。
「嘘をついている人間の目は、左右によく泳ぐってね」
ほこりひとつないメガネの奥、精密な思いやりが僕を見ていた。