給食とそのあとの休み時間は保健室で休んだ。
 ベッドで少しの間横になると体調は落ち着いてきて、なんとか午後の授業には戻ることができた。
 けれど、内容は、全く耳に入らなかった。
 僕を構成する体以外の全てが、河川敷にあった。

 考えてみれば、遥奏の学年をちゃんと聞いたことがなかった。
 初めの日に「タメ口でいいよ」と言われてから同級生のように接するうち、僕と同じ中一だと無意識に思い込んでいた。

 遥奏はいつも、僕に質問してくるのに。
 僕のほうからは、遥奏のことを何も知ろうとしなかった。

 入学準備のこととかを考えると、早めに関西に行ってしまっているかもしれない。
 とはいえ、今日はまだ三月十六日。
 遥奏がまだ関東にいる可能性は十分ある。
 そう自分に言い聞かせるけど、焦りはどんどん募っていった。

 下校の挨拶が終わるなり、職員室へ直行した。
「すみません、今日は体調が悪いので休みます」
 嘘ともほんとうとも言い切れない事情を片桐先生に話してから、早足で河川敷へ向かう。

 いつもの川岸の階段にたどり着き、あたりを見回しながらしばらく待ってみた。
 そのまま十分、二十分と過ぎても、遥奏は現れなかった。
 川岸を離れて河川敷を歩けるだけ歩いてみたけれども、それらしき姿は目に入らないまま、日が暮れた。
 今日はたまたま遥奏が来ない日だったのかもしれないと考えた僕は、翌日また出直すことにした。

 ——けれども、次の日も遥奏は現れなかった。