次の日から、僕は河川敷に行かなかった。
 どのみちテスト勉強をしなきゃいけない。九教科に対応するためには、河川敷でダラダラしている場合ではなかったのも事実だ。
 帰りのホームルームが終わったら図書室に直行し、下校時刻まで勉強してから帰った。
 帰宅してからの時間は、なるべく自分の部屋にこもっていた。父さんに「練習が休みでもランニングくらいはしとけ」なんて言われるのを避けたかったから。

 ※ ※ ※

 テスト最終日の最後の教科は、社会だった。
 数学や国語と違って、暗記科目である社会のテストは、大幅に時間が余りがちだ。

 テスト開始から三十分が経ち、ほとんど全員が問題を解き終えて暇を持て余しているようだった。机に突っ伏している人、落書きをしている人、ぼーっと窓の外を眺めている人。
 僕の斜め前の水島くんだけが、テスト開始時と変わらない殺気を維持して何度も見直しを行っていた。

 こういう時間、普段の僕なら問題用紙に落書きをしていることが多い。
 けれども、今は全然そういう気分になれなかった。
 テスト期間初日に遥奏と言い争った時の記憶が、何度も脳内で再生される。

 八つ当たりしてしまったことに対する罪悪感。
 部外者の立場から余計な批判をされたことに対する怒り。
 あらゆることがタイミング悪く重なってしまった運命を呪う気持ち。

 何色もの感情が入り混じったまま九日間が過ぎ、胸の中のパレットにどす黒い塊がこびりついていた。