七年前の夏。冷房の効いた「年長さんのお部屋」。

 半数以上のおともだち(・・・・・)は外へ出かけてしまっている中、チカちゃんと僕は室内に残って、クレヨンで色とりどりの絵を描いていた。
「ねえねえ、チカちゃん! つぎはあのきのえかこうよ!」
 パンダの絵を描き終えて所在無げにしているチカちゃんの肩を叩いて、窓の外を指差す。

「きれいだね。いこっか」
 室内の喧騒にかき消されてしまいそうな、か細い声。
 けれど、僕にはチカちゃんが乗り気だということがはっきりわかった。

「わーい!」
 僕は踊り出しそうな勢いで立ち上がり、チカちゃんの手を引く。
 チカちゃんは、困ったように「ちょっとまってよ」なんて言いながら腰を上げ、僕についてきた。