次の日の放課後、河川敷にたどり着いた僕は、描いてきたチラシを早速遥奏に見せた。
「ありがとう! さっすが秀翔!」
遥奏はとても満足げだった。
「これならりょう……えっと、仲良しの子も喜ぶはず!」
遥奏が、僕の知らない人の名前を言いかけた。
「りょうへい」か、「りょうた」か、はたまた「りょう」で完成なのか。
知らないけど、下の名前に思えた。
そうか、遥奏にとっては、例え異性同士であっても同級生が下の名前で呼び合うのは別に特別なことじゃないんだな。
僕を「秀翔」と呼ぶのは、家族を除けば遥奏だけだけど。それはあくまで僕にとって特別なことにすぎない。
「お礼は何がいい?」
「いいよ、別にお礼なんて」
「えー! そういうわけにはいかないよ!」
僕はそれ以上チラシの話題には触れず、スケッチブックを開いて絵を描き始めた。
その斜め前で、遥奏は歌い始めた。
この間電子ピアノを持ってきた時とは、また違う歌を歌っていた。
日本語詞ではない。かといって、(僕のリスニングの正確さはさておき)英語にも聞こえなかった。
歌詞の聞き取れない歌声を耳に入れながら、僕は目の前の情景を画用紙の上に写し取っていく。
今日みたいな真っ青な快晴の空って、ときどき居心地悪く感じることがある。
雲ひとつないなんて、なんか無理してる気がして。
スケッチブックの上に、雲を付け足して描いた。
「ねえ秀翔! 石切やらない?」
いつのまにか今日の空とはかけ離れた曇天模様を完成させてしまった僕に、突然遥奏が声をかけてきた。
「イシキリ?」
初めて聞く単語だったけど、なんのことを指しているのかだいたい想像がついた。
小学校の遠足とかで、クラスメートが川に石を投げて何回跳ねたか競っているのを見たことがある。たぶんあれのことだろう。
「向こうの方に砂利がたくさんあるんだよね!」
そう言って遥奏は僕の制服の袖を引っ張った。
「ちょっと、荷物持ってくから待って」
「早く早く!」
あわただしく荷物をまとめて立ち上がり、遥奏のあとに続いて歩く。
目的地へ向かって、スキップするような足取りで進む遥奏。
僕はその後ろを、少しゆっくりめのペースで歩いた。
そうすることで、袖を引っ張る遥奏の力がはっきりと感じられた。
「ありがとう! さっすが秀翔!」
遥奏はとても満足げだった。
「これならりょう……えっと、仲良しの子も喜ぶはず!」
遥奏が、僕の知らない人の名前を言いかけた。
「りょうへい」か、「りょうた」か、はたまた「りょう」で完成なのか。
知らないけど、下の名前に思えた。
そうか、遥奏にとっては、例え異性同士であっても同級生が下の名前で呼び合うのは別に特別なことじゃないんだな。
僕を「秀翔」と呼ぶのは、家族を除けば遥奏だけだけど。それはあくまで僕にとって特別なことにすぎない。
「お礼は何がいい?」
「いいよ、別にお礼なんて」
「えー! そういうわけにはいかないよ!」
僕はそれ以上チラシの話題には触れず、スケッチブックを開いて絵を描き始めた。
その斜め前で、遥奏は歌い始めた。
この間電子ピアノを持ってきた時とは、また違う歌を歌っていた。
日本語詞ではない。かといって、(僕のリスニングの正確さはさておき)英語にも聞こえなかった。
歌詞の聞き取れない歌声を耳に入れながら、僕は目の前の情景を画用紙の上に写し取っていく。
今日みたいな真っ青な快晴の空って、ときどき居心地悪く感じることがある。
雲ひとつないなんて、なんか無理してる気がして。
スケッチブックの上に、雲を付け足して描いた。
「ねえ秀翔! 石切やらない?」
いつのまにか今日の空とはかけ離れた曇天模様を完成させてしまった僕に、突然遥奏が声をかけてきた。
「イシキリ?」
初めて聞く単語だったけど、なんのことを指しているのかだいたい想像がついた。
小学校の遠足とかで、クラスメートが川に石を投げて何回跳ねたか競っているのを見たことがある。たぶんあれのことだろう。
「向こうの方に砂利がたくさんあるんだよね!」
そう言って遥奏は僕の制服の袖を引っ張った。
「ちょっと、荷物持ってくから待って」
「早く早く!」
あわただしく荷物をまとめて立ち上がり、遥奏のあとに続いて歩く。
目的地へ向かって、スキップするような足取りで進む遥奏。
僕はその後ろを、少しゆっくりめのペースで歩いた。
そうすることで、袖を引っ張る遥奏の力がはっきりと感じられた。