「べ、別に!」
反射的にスケッチブックを閉じる。
「絵を描いてたの? 見せて!」
「ちょっ!」
返事をする隙もなく、女の子が僕の手からスケッチブックを奪い取った。
いったい何のつもりだろう?
新手のカツアゲとかだったらどうしよう……。
そんな僕の心境にはお構いなく、女の子は、スケッチブックをめくっては一枚一枚を食い入るように見つめる。
一旦抵抗を諦めた僕は、改めて目の前の女の子の姿を見てみた。
うちじゃない学校の制服だ。上下ともに濃い紺地のセーラー服。襟元と袖口に白い線が三本ずつ。胸元には、光沢のある鮮やかな緑色のリボン。
外側に軽くハネた肩ほどの長さの髪が、風に吹かれてふんわり揺れている。
「きれい!!」
数ページめくったところで、女の子がぱーっと顔を明るくしながらそう言った。
「これ、全部君が描いたの?」
「えっと……はい。ただの暇つぶしですけ……」
「すごいね! すごいすごい!」
飛び跳ねるような声で僕の言葉を遮りながら、次々とページをめくり、ときどき手を止めては顔を輝かせる。
「これめちゃくちゃいい!」
女の子が、スケッチブックを僕の方に向けた。
数日前に描いた花の絵だ。川岸に向かう途中で咲いていたアカツメクサ。
たしかに、自分の中ではよく描けた方だと、僕も思う。
だけど、
「別に、それくらい描ける人はいっぱいいますし」
「そうなんだー 絵の世界は厳しいんだね! でも……」
アカツメクサの各部位をくるくる回っていた瞳が、ふいに僕の方に向けられた。
「私はすっごく好きだよ! この絵!」
反射的にスケッチブックを閉じる。
「絵を描いてたの? 見せて!」
「ちょっ!」
返事をする隙もなく、女の子が僕の手からスケッチブックを奪い取った。
いったい何のつもりだろう?
新手のカツアゲとかだったらどうしよう……。
そんな僕の心境にはお構いなく、女の子は、スケッチブックをめくっては一枚一枚を食い入るように見つめる。
一旦抵抗を諦めた僕は、改めて目の前の女の子の姿を見てみた。
うちじゃない学校の制服だ。上下ともに濃い紺地のセーラー服。襟元と袖口に白い線が三本ずつ。胸元には、光沢のある鮮やかな緑色のリボン。
外側に軽くハネた肩ほどの長さの髪が、風に吹かれてふんわり揺れている。
「きれい!!」
数ページめくったところで、女の子がぱーっと顔を明るくしながらそう言った。
「これ、全部君が描いたの?」
「えっと……はい。ただの暇つぶしですけ……」
「すごいね! すごいすごい!」
飛び跳ねるような声で僕の言葉を遮りながら、次々とページをめくり、ときどき手を止めては顔を輝かせる。
「これめちゃくちゃいい!」
女の子が、スケッチブックを僕の方に向けた。
数日前に描いた花の絵だ。川岸に向かう途中で咲いていたアカツメクサ。
たしかに、自分の中ではよく描けた方だと、僕も思う。
だけど、
「別に、それくらい描ける人はいっぱいいますし」
「そうなんだー 絵の世界は厳しいんだね! でも……」
アカツメクサの各部位をくるくる回っていた瞳が、ふいに僕の方に向けられた。
「私はすっごく好きだよ! この絵!」