部活をサボり始めてから、ほぼ毎日ここに来ては絵を描いている。
最初は、ぼーっと河川敷を眺めていた。
なんとなく、それだけじゃ物足りなくなって、スケッチを始めた。
最初は、使い切った数学ノートの表紙の裏に。
次の日は、入れっぱなしだった用済みのプリントの裏側に。
三日目、どうせならと思って、使っていなかったお年玉でスケッチブックと色鉛筆を買った。
そうして毎日、川岸から見える風景を描いている。
別に絵を描くのが好きってわけじゃないけど、部活をサボっている間の時間を潰すのには、ぼーっと風景画を描くのはちょうどよかった。
下書きが終わり、ペンケースから色鉛筆を取り出した。
よく研いだ水色の色鉛筆を寝かせて、力を入れすぎないようにしながら、手首を左右に動かす。
白い画用紙に少しずつ色が浮かび上がり、やがて今日の空そっくりの澄んだスカイブルーが現れた。
「ふっ、ふっ、ふっ......」
すぐ後ろから、ランニング中の人——声からしてたぶん中年男性——の息遣いが聞こえる。
「じゃあさ、今度そこ行こうよ!」
「行こ行こ!」
さらに後ろから、若い女性数人の楽しそうな会話。
顔も名前も知らない人たちの声が、そよ風のように僕の背中を通り過ぎていく。
ここの河川敷にいる人たちは、僕にとってはみんな「風景」。
僕の周りを取り囲んでいて、それでいて僕に関わってくることはない音。
その一つひとつにいちいち耳を傾けることはなかった。
だから、気づかなかった。
「何してるの?」
斜め後ろから近づいてくる人の気配に。
スケッチブックに黒い影が落ちたことで、僕はすぐ後ろに人が立っていることを悟る。
振り返ると、そこには知らない女の子。
じーっと、僕の手元を覗き込んでいた。
最初は、ぼーっと河川敷を眺めていた。
なんとなく、それだけじゃ物足りなくなって、スケッチを始めた。
最初は、使い切った数学ノートの表紙の裏に。
次の日は、入れっぱなしだった用済みのプリントの裏側に。
三日目、どうせならと思って、使っていなかったお年玉でスケッチブックと色鉛筆を買った。
そうして毎日、川岸から見える風景を描いている。
別に絵を描くのが好きってわけじゃないけど、部活をサボっている間の時間を潰すのには、ぼーっと風景画を描くのはちょうどよかった。
下書きが終わり、ペンケースから色鉛筆を取り出した。
よく研いだ水色の色鉛筆を寝かせて、力を入れすぎないようにしながら、手首を左右に動かす。
白い画用紙に少しずつ色が浮かび上がり、やがて今日の空そっくりの澄んだスカイブルーが現れた。
「ふっ、ふっ、ふっ......」
すぐ後ろから、ランニング中の人——声からしてたぶん中年男性——の息遣いが聞こえる。
「じゃあさ、今度そこ行こうよ!」
「行こ行こ!」
さらに後ろから、若い女性数人の楽しそうな会話。
顔も名前も知らない人たちの声が、そよ風のように僕の背中を通り過ぎていく。
ここの河川敷にいる人たちは、僕にとってはみんな「風景」。
僕の周りを取り囲んでいて、それでいて僕に関わってくることはない音。
その一つひとつにいちいち耳を傾けることはなかった。
だから、気づかなかった。
「何してるの?」
斜め後ろから近づいてくる人の気配に。
スケッチブックに黒い影が落ちたことで、僕はすぐ後ろに人が立っていることを悟る。
振り返ると、そこには知らない女の子。
じーっと、僕の手元を覗き込んでいた。