力強さを売りにする方針で行くのだろうか。韓国で流行している「ガールクラッシュ」のイメージを自分に寄せたい気もあるのかもしれない。それならば主戦場はK‐POPの分野になるが。

 こちらに向かってくる圧が、どんどん強くなる。

(……ん?)

 彼女が踊りをやめて、凪のいるベンチへ歩いてきていた。
 大股で、ずんずん進んでいく。
 射貫くような目で、凪を真正面に見据えている。

(え、やられる? 殴られる?)

 凪は途端に後ずさり始める。ベンチに座っているため逃げ場がない。あたふたとしているうちに相手は目と鼻の先まで距離を縮めてきている。

「いや、あの、違いますよ。ダンスうまいなあーって思っただけで。ストーカーじゃないですよ。社会人です。立派なフリーターです」

 凪が言い訳をくり出すごとに彼女の瞳は鋭くなっていく。

(まずい。誰か助けてくれ)

「あの、本当すみません。警察だけは呼ばないでください。不審者じゃないので、不審者じゃないので」
「どうでしたか」
「はい?」
「私のダンス、どうでしたか?」