夏の匂いを感じさせる、ぬるい風が吹いた。住宅群の隙間から沈みかけの太陽が覗いていた。
「とっても幸せな時間をもらえている気がするの」
言葉と裏腹に、彼女は悲しげに微笑んだ。
「私、ずっと夢だった。踊るのが好きで、みんなが盛り上がってくれるのが嬉しくて、これからはもっと大勢の人たちを幸せにしてあげられるんだって予感がして、今、無敵なの。オーディション、絶対に合格してやる」
「その意気だよ」
まゆが顔を向けた。しどけなく凪にもたれかかる。片腕で抱きとめ、頭を撫でてやる。アッシュブラウンの髪は綺麗に手入れされていて、指になじんだ。
「凪。私のこと、好き?」
「好きだよ。当たり前だろ」
安心したように、まゆは息を一つ吐いた。
夕方にも関わらず、気温は下がる気配を見せなかった。むっとした風の匂いが鼻腔をかすめる。
「条件を出されて」
「……うん」
目指すのは芸能界だ。内容は話されなくともすぐに予想がついた。
「私、あなたの存在を隠しておかなくちゃいけない。それか、関係を終わらせてほしいって」
「とっても幸せな時間をもらえている気がするの」
言葉と裏腹に、彼女は悲しげに微笑んだ。
「私、ずっと夢だった。踊るのが好きで、みんなが盛り上がってくれるのが嬉しくて、これからはもっと大勢の人たちを幸せにしてあげられるんだって予感がして、今、無敵なの。オーディション、絶対に合格してやる」
「その意気だよ」
まゆが顔を向けた。しどけなく凪にもたれかかる。片腕で抱きとめ、頭を撫でてやる。アッシュブラウンの髪は綺麗に手入れされていて、指になじんだ。
「凪。私のこと、好き?」
「好きだよ。当たり前だろ」
安心したように、まゆは息を一つ吐いた。
夕方にも関わらず、気温は下がる気配を見せなかった。むっとした風の匂いが鼻腔をかすめる。
「条件を出されて」
「……うん」
目指すのは芸能界だ。内容は話されなくともすぐに予想がついた。
「私、あなたの存在を隠しておかなくちゃいけない。それか、関係を終わらせてほしいって」