埒が明かない。凪は正直な気持ちを伝えることにした。

「残念だな。お前には……さ」

 いざ言葉に出すと、胸にちくりと空しさが刺した。

「パフォーマンスアートの精神を感じたのに」

 彼女がこちらに顔を向けた。
 すがるような瞳と、その奥に隠れる、凪への熱い情欲が見て取れた。
 何かを必死にこらえている。まゆの中から強い思いが熱となって放出されている。

「そっちこそ」

 まゆは泣き声に近い声色で訴えた。

「何でも話してほしかったのに」

(――――ああ)
 隠しごとはなぜバレるのだろう。

「夜に、眠れないのは……。いつから……。子どもの時からずっと、続いてるなら、どうして病院に行かないの……? 私じゃ癒せないなら、今になって会いに来ないでよぉ……」

 まゆは子どものように泣きじゃくっていた。顔を覆った手のひらがひどく震えている。

 凪は知らずと空を見上げた。
 冷たい風。暗闇を灯す常夜灯。今日は晴れてるのだろうか、星がチカチカと瞬いている。こちらの都合のために天気は悪くなってくれず、肩を濡らす雨は降らない。

「毎日飲んでるあれも、教えてくれない……」