流されるのが性に合っていた。木枯らしに吹かれ巻き上がる落ち葉のかたまりのように、何も逆らわず動かされず、時代の潮流に押されるまま生きるのが好きだった。

(だってそっちの方が楽しくない?)

 なぜみんな抵抗するのだろう。上へ行こうとするのだろう。ここではないどこかへ、居場所を探しに出かけるのだろう。

 俺にはわからない。周りの意思が。

 凪はレジのカウンターに立ち、事務作業に集中した。


 足がY公園の方角へ向かっているのは自覚していた。

 新田にかけられた言葉を反芻しているうちに、凪は知らずと電車に飛び乗っていた。各駅停車、青梅行き。

 吊り革に掴まる。窓越しに、高速で流れ去る民家が見える。一つ一つの家庭に、それぞれの家族が帰って、食事をとって眠りについて、朝になれば家を出ていく。それが当たり前のようにくり返され、これからもくり返されていくと信じて疑わない。

 胸の奥がきゅっとなる。

 自分が何を欲しがっているのか。

 渇望しているものを自覚してないほど子どもではなかった。けれど手を伸ばせる容易さでもないことも、充分承知していた。