「女は、あんたを見ると愛情を与えたくなっちゃうのよ。母性っていうか、慈愛の心っていうか。この人孤独で震えてるから、上着くらいかけてあげるかなあ、みたいな感情だと思う。女は孤独を読み取るのがうまいから」

 へえ、と凪は淡白な返事をした。新田から分けられたウインナーを頬張り、締めのスープを半分ほど飲む。インスタントの安っぽい味が、腹にしみた。

「対してあんたは、受け入れてるふりして、求めてる。先にまゆちゃんに恋したのは凪の方だよ」
「何で断言できるのさ」

 だって、と新田は言いかけ、口をつぐんだ。数秒気まずい沈黙が流れる。

「怒らないから言えよ」
「えー、じゃあ言うけどぉ。――死んでるじゃん。今のあんた」
「もとからこういう顔だっつの」
「最近ますます干上がった男みたいに見えるよ」
「人を魚に例えるな」

 言葉の応酬をしばらく交わした後、休憩時間の終了を知らせるタイマーが鳴った。

 さて、仕事仕事、と新田は逃げるように席を立ち、さっさと持ち場へ戻っていった。凪も立ち上がる。

 最初から、心なんて死んでるし。