新田は凪の異論にかまわず、ほうれん草のひたし、卵焼き、プチトマトなどを次々に放る。凪は大人しく受け取って、麺と一緒に口に入れる。

「俺がかわいそうなんじゃなくて、俺に遊ばれた蝶野まゆさんがかわいそうなんですよ」

 得意げに笑う凪を見て、新田は若干深刻に表情を落とした。

「溺れてるのは、凪だと思うけどなあ」
「まさか」

 凪は一笑する。新田がこちらを見ている。

「悪趣味なストーキングしてたら、まゆちゃんから声をかけられたんだよね?」
「おう」
「まゆちゃんのどこに惹かれて、付き合ったの?」
「いや、向こうから告白された。これ俺の自慢なんだけど、自分から行ったことないのよ。絶対相手に惚れられるの。みんなそうだったし」

 いったん間が空き、次に新田の台詞が降ってきた。

「たぶん、あんたが哀れだからじゃない?」
「…………は?」

 凪は鋭い目で凄んでみせた。関係性ができあがってる新田の前では効果などないが、たやすく「哀れ」と言われて受け入れるほど、自分は落ちぶれてないと凪自身思っていた。

 新田は凪のにらみを正面から受け止める。そして続けた。