「現状? まゆは踊ることで何を伝えたいの」

 ひりっとした感覚にふれた。

 ああ、苦手だな。

 相手の核心をつく時にあふれ出る殺伐とした緊張感が、凪は苦手だった。そのくせそこを無自覚につくのは誰よりもうまい。

「多分ね」

 壊そうかな、と思った。

「合ってないんだと思うよ」

 冷静に出した声は低い響きを伴っていた。

「まゆのやりたいことと、目指すべき方向性が」

 相手が目を見開く。

「私にダンスは向いてないってこと?」
「違う。方向性って言っただろ。ポップなことやってるじゃん、今。でも周りがお前に求めているのは、それじゃない。お前の笑顔は怖い。笑いながら、美しい顔で踊るお前がすごく怖いよ」

 きっと自覚があるのだろう。まゆの瞳が揺らいでいた。不安そうに交差する互いの視線。彼女の目に自分の無表情な顔が映り込んでいる。

「まゆは知ってるはずだよ」

 掴まれている腕が痛い。きつく指を食い込まれている。

「今のままじゃ飛べないってこと」

 まゆは押し黙った。
 この子は、本当は気づいているのではないか。自分が彼氏に求めているものと、凪が自分のどこを見ているのかという視点に。