少しつり気味に上がった目もと、よく整えられて綺麗な体裁を保った眉、口調からにじみ出る溌剌とした声が、まゆの手垢のついていない若さを強調していた。

「俺はずっと素人でいいの?」
「そうそう。私のお客さんだから。私だけの」

 まゆは満足そうに、こちらに腕を絡めてくる。彼氏としての優越感を感じるとともに、ある種のしこりのようなものが凪の心に巣くう。

(いろいろと、憤ってるんだろうな。自分にも人にも)

 横断歩道を渡りながら、まゆがこちらをじっと見上げているのに気づいていた。

「凪こそ、いつも何飲んでんの?」
「ああ、あそこの自販機でしか売ってないマイナーな飲み物」
「レアもの?」
「そう、売れ筋じゃなくて一点もの。みんなの口には合わないんだよなー」
「私の口にも合わない?」
「まゆには難しいだろうなあ」

 ふうんと言ったきり、まゆは会話をやめた。

 信号機が点滅する。小走りで歩道を渡り終え、何となく話を続けるのも気だるい感じがした。

 まゆの手が腕から指先に絡み始めていた。

 何となくそれっぽい行為をする空気になったのを察知した凪は、恋人の頭を自分の方に引き寄せた。