『藤沢……』

先生の顔が、やけに近い。

『あっ、先生……』

近づいてくる唇に、避ける事ができない。



「先生、ダメぇっ!」

「おい、藤沢!」

その声で、目がぱっちり開かれた。

「俺が、何かしたか?」

目の前の先生は、私の横にしゃがんではいるが、明らかに心配そうな視線をしている。


うわっっ。

短い間に夢見てた。


「はっ?お前、寝てたの?教科書開いたばっかりだぞ。」

むくれながら教科書を閉じる。

仕方ないじゃん。

先生の夢、見ちゃったんだから。


「食い物の夢か?」

「えっ?」

先生が口元を、人差し指でトントンと、指差す。

「ヨダレ、垂れてる。」

私は、恥ずかしくてすぐに腕で、口元を拭った。


ひぃぃぃぃ!

私、寝る時に、口を開けて寝ちゃうんだよね。

それを見られたなんて、最悪。


「あっ‼まだ付いてる。」

先生は近くにあるティッシュを取ると、私の口の脇を拭いてくれた。