「おはよ、芽依。」

友達の美羽ちゃんが、席を取ってくれている。

「おはよ。」

テキストをバックから出して、昨日の続きを開く。

「なんか芽依、変わった?」

「へっ?」

私、何かした?

思い返しても、席に座ってテキストを取り出しただけだ。


「大人っぽくなった。もしかして、彼氏できた?」

「えっ……」


彼氏。

頭の中で先生が思い浮かぶ。


「いやあ……違うかも。」

「じゃあ、好きな人?」


好きな人……


「それも違うかも。」

「なによ、芽依。面白くない。」

急に不貞腐れる美羽ちゃん。

「面白くないって、美羽ちゃん、私たち受験生だよ?恋愛とかしてる暇ないって。」

なんとか美羽ちゃんのご機嫌を直るように、両肩を横から揉む。

「まあね。でも、それぐらいなかったら、この辛い受験戦争、勝てないわけですよ。」

「まあまあまあ。美羽ちゃん、落ち着いて。」