すると、先生はふいに掴んでいた私の腕を、払いのけた。

「せ、先生?」

「安心しろ。もしもの話だよ。」

そう言って先生は、ご飯とお味噌汁をテーブルまで持ってきた。

「ほれ、飯。」

「は、はい。」

先生がご飯とお味噌汁を置いてくれた場所に座ると、今度はその横に目玉焼きが置かれた。

「いただきます。」

「はい、どうぞ。」


その言葉以来、なんの会話もなく、ただ箸と皿が交わる音と、食べる音だけが部屋の中に響く。


「美味いか?」

「ん?うん……」

「そうか。」


心なしかご飯を食べている時も、先生に見られているような気がする。


「ご飯……」

「はい?」

「いっぱい食べろよ。」


そのセリフ、なんだかお父さんみたい。


そんな事考えたら、ご飯を食べている最中なのに、ふふふっと笑いがこみあげてきた。


「何?その笑いは。」

「ううん。何でもない。」