「おはよう、藤沢。」

次の日の朝。

先生は前の日の晩の事を忘れているかのごとく、教師に徹していた。

「おはようございます。」

タオルで顔を拭きながら、不貞腐れた顔を見せないように頑張った。


何なのよ。

昨日の夜、私のこと名前で呼び捨てにしたくせに!

あんなに甘い声で、『芽依』って呼んだくせに!!

なんで朝になって、何でもない様に苗字て呼ぶのよ!!!


「あのさ。」

「はい?……はっ!!!!」

あまりにも腹が立って、低い声で答えてしまった。

「す、すみません。」

「いや、その……」


お互い恥ずかしい夜を過ごした後の朝にしては、気まず過ぎる。


「今日も塾?」

「はい。塾です。」

なぜかシーンとなる洗面台の前。

「じゃあ、朝ご飯作らないと。」

先生はスッと立ち去り、キッチンでガサゴソ、朝食を作り始めた。


その背中を遠くから見る、女子高生一人。