「何でもない……ただ………」

「ただ?」

そっと先生の胸元に、忍び込んだ。

「今夜はずっと、先生の傍にいられるなぁって……」

「芽依……」

額にチュっと口付けを貰って、私は夢の中にいるようだった。


いつの間にかスーッと寝息を立てる先生。


一年前。

先生が産休の先生の代わりに、教壇に立った時。

実はその前に、先生と顔を合わせていた。


朝、登校すると下駄箱の前で、スーツを着た人がウロウロしていた。

『こちらに何かご用ですか?』

話しかけた私に、先生は近付いてきた。

『今日から産休代理でお世話になる者なんですが……』

『先生なんですか?』

私の質問に、一瞬戸惑っていたっけ。

『ええ、まあ……』

『でしたら、職員用玄関はあちらです。』

私が指さすと、先生は満面の笑顔で、“ありがとう”と言ってくれた。








ねえ、先生。

あれが私達の出会いだったって、覚えているかな。