先生の部屋に帰ったのは、わずか2時間後のことだった。

こんなに早く帰ってきてよかったのか。


でも塾は終わっちゃったし。

荷物はここにあるし。

私は先生の部屋の前で、10分悩んだ挙句、そっと玄関のドアを開けた。


短い廊下の奥に、先生の姿はない。

「先生?」

玄関に鍵も掛けず、どこかに行ってしまったんだろうか。

私は靴を脱ぎ、廊下をタタタッと小走りで移動した。


「よお!お帰り。」

「先生!」

人の心配を他所に、当の本人はキッチンで、水を飲んでいた。

「どうした?急いで入ってきたけど。」

私は深呼吸をすると、ううんと首を横に振った。

「ただいま、です。」


私がいない間に、先生がどこかに行ってしまったと思ったなんて口にしたら、先生はきっと大笑いするだろう。

そもそも、ここは先生の家であって、例え出掛けたとしても、私には関係のない話なのだから。