「え、エゴール、落ち着いてよ。見つかったんだから……」

 私がそう言うと、エゴールの怒りはこちらに向いた。

「コユキ! あなたもですよ! あれだけ目を離さないように言ったのに!」
「ご、ごめんなさい……」

 確かに、怒られても仕方ない。私は頭を垂れて、エゴールの話を黙々と受け入れる他なかった。
 私たち二人は、エゴールに叱られながらお城に戻る羽目になった。お城に着くころにはエゴールも言いたいことをすべて言い尽くしたのか、少しはつらつとした顔をしていた。その代わり、私もエミリアちゃんもげんなりしていたけれど。

「おかえり」

 玄関に着くと、まさか、レオさんが待ち構えていた。私とエゴールは「ひっ!」と小さく悲鳴を上げる。

「おとうさま!」

 エミリアちゃんは嬉しそうにレオさんの元に近づく。

「エミリア、ついて行ってはダメだと言っただろう」
「ごめんなさーい」
「ふたりとも、迷惑をかけてすまなかったな」
「めっそうもないです、魔王様!」

 エゴールは私をちらりと見る。私はその視線に頷いた。これは、エミリアちゃんが迷子になったという事は私たちだけの秘密にしようという合図だ。これがバレてしまったら、レオさんはきっとすごい怒る。魔王様に怒られるなんて、考えただけで恐怖でぞっとしてしまう。

「エミリア、いい子にしていたか?」
「うん! みんなでカフェにいったのよ!」
「そうか、良かったな」

 二人は見つめ合ってニコニコとほほ笑んでいる。良かった、このままならバレそうにない……そう思った矢先、エミリアちゃんは口を開く。

「でも、エミリア迷子になっちゃった」
「……あっ」
「は?」

 レオさんの額に青筋が走る。私とエゴールは回れ右で逃げようとしたけれど、急に足元が冷たくなったのを感じ、脚が動かなくなった。下を見ると、足首まで氷漬けになっている。

「……二人にはきちんと話を聞かなければならないようだな……」
「ひえええええ」

 私とエゴールはレオさんにこってりと絞られ、その日はエミリアちゃんのご飯どころではなくなってしまった。