「聞いたぞ。すごかったんだってな、レオン」
「ねえ、見直したわよ」
「年は多少食ってても、十分やれるんだな」

 男女問わず、何人もの生徒たちが俺の下に集まってきた。

 今までは年長組ということで露骨に蔑視されたり、あるいは腫れ物に触るような扱いだった。

 けど、今は違う。
 俺がダンジョンでモンスターも罠も寄せつけず、最短クリアに大きく貢献した話が伝わっているんだろう。

 誰も彼もが目をキラキラさせて俺を見ていた。

 さらに、同年代やアラフォー世代も集まってくる。

「すごいな、三十歳でもまだまだやれるもんだ」
「なんか、勇気が湧いてきたよ」
「俺、今年で四十三だけどもうちょいがんばってみようかな」

 彼らの目もキラキラしている。

 ダンジョン内で、マナもこういう目で俺を見ていたっけ。

 そう、みんな冒険者志望だもんな。
 活躍した者には憧れるし、敬意も払ってくれる。

 実力の世界──冒険者。

 だからこそ、その実力を示せば、誰もが認める。
 ある意味、公平で潔い世界。

「これから、俺が進んでいく世界……か」
「……ちっ、面白くねぇ」
 ぼそり、と声が聞こえた。

 たぶん独り言のつもりだったんだろうけど、俺の耳にはやたらと鮮明に聞こえる。
 これもレベル1000になって、あらゆる反応や身体能力がアップしているからなんだろうか。

 さっきの言葉は、ジェイルのものだ。
 振り返ると、奴が憎々しげに俺をにらんでいた。

「注目を集めるのは、いつも俺だったのによぉ……てめぇはそれを横取りしやがった……許さねぇ……!」

 だから、全部聞こえてるって。

 まあ、いいや。
 近いうちに、奴とは決着をつけることになるだろう──。



「えへへ、私もダンジョン最短クリア記録のメンバーってことで、高い評点をもらっちゃった」

 マナがニコニコ顔で報告に来た。

「ありがとね、レオンさん」
「礼なんていいさ。俺たちは五人でダンジョンをクリアしたんだ。手柄も全員で受け取ればいいんじゃないか?」
「うーん……ほとんどレオンさん一人で達成したようなものだし」

 マナが苦笑する。

「私、もっともっとがんばるね。正直、冒険者の才能があるほうじゃないけど……でも、レオンさんのすごさを見てたら、私も少しでも近づきたいって思ったの」
「俺に……?」
「遠い遠い目標、だね。がんばる」

 マナがにっこりと笑った。

 まっすぐで、けなげで──本当にいい子だなぁ。

「大丈夫、マナはもっと強くなれるよ」

 俺は微笑んだ。

 それから、ふと思った。
 レベル1000の竜の戦士──その力で、彼女を強く鍛えることはできないだろうか。

 今までまったく使えなかった魔法がいきなり使えるようになったんだし、もしかしたら役立つ呪文を使えるかもしれない。

 よし、学校から帰ったら、水燐竜王に相談してみよう。