「魔法……か。単にイメージしただけで発動するんだな」

 もっと複雑な詠唱とか身振りとかが必要だっていうイメージだったけど。

「なんで、今ので魔法が使えるの!?」

 マナが驚いていた。

「今、無詠唱だったよね!? それでリザードマンを一撃って!」
「リザードマンってかなり高い魔法防御持ちだよな……」
「ああ、上級魔法を何発か撃ちこんでやっと倒せるレベルだぞ……」

 と、他のメンバーもざわめいている。

「だいたい、レオンさんって魔法の素質はないって言ってたじゃない!」

 叫ぶマナ。
 質問攻めだ。

「ええと、その……ああ、土壇場になって俺の秘められた力が目覚めたんだよ。きっと」

 ちょっと言い訳としては苦しいか。

「秘められた力……!」

 マナは目をキラキラさせていた。

「すごい……かっこいい……」

 とりあえず納得してくれたんならよかった。

「他のみんなも大丈夫だったか?」

 俺はマットたちを見る。

「お前……本当に、何者だ……?」

 マットたち三人は青ざめた顔で俺を見ていた。
 まるで──化け物でも見るかのように。

 さっきの俺の魔法や、その前のワンパンでのリザードマン撃破もあって、俺に対して驚きよりも恐怖を抱いているのか……?

「秘められた力……わたしにもあるかなー……!」

 マナはあいかわらず目をキラキラさせている。
 こっちは、俺に対する畏怖はないようだ。

 ちょっとホッとした。

 マットたちに嫌われようが、恐れられようが、別にどうってことはない。
 ただ、マナにそう思われるのは嫌だった。

 だから──俺は安堵した。

「ん、どうしたの?」
「できれば、これからもそうやって接してくれたら──嬉しい」

 俺はつぶやき、微笑んだ。



 その後、現れるモンスターは俺がすべて瞬殺。
 罠に気を付けるため、探知系の魔法が使えないか試したら、これまた簡単に発動した。

 というわけで、俺たちは罠もモンスターも余裕でクリアし、以降は最短距離で目的地に到達。

 無事に演習をクリアしたのだった。



 俺たちは地上に戻ってきた。

「もう戻ってきたのか!?」

 教官や生徒たちがいっせいにどよめいた。

「マット、お前……すごいな」

 ジェイルが驚いた顔でマットの元に駆け寄る。

 俺をチラッと見て、舌打ちした。

「こんな足手まといのオッサンを連れて、最速タイムでクリアか。はは、こいつは手ごわいライバルの出現だ」
「ち、違う……」

 マットはふるふると首を左右に振った。

「あいつだ……あのオッサン、信じられねぇ……」
「なんだと?」
「近接戦闘も魔法戦闘も規格外だ……あのオッサンはバケモンだぞ」