「ええええええええええええええええええっ!?」

 マナやマットたちが驚きの声を上げていた。

「ち、ちょっと、すごいね、レオンさん……信じられない」
「ワンパンで倒すとか、ありえねー……」
「何者だ、あいつ……」
「こんなに強かったのか……? 単なるオッサンじゃないのかよ……」

 メンバー全員が俺に畏怖の視線を注いでいた。

「いや、まあ……」

 ちょっと派手にやりすぎたか?

 俺もさすがにパンチ一発でリザードマンを倒せるとは思ってなかった。
 レベル1000って数値は、俺が思っているよりずっとすごいのかもしれないな。

 これなら冒険者としてやっていけるだろう。

 うん、ちょっと──いや、かなりテンションが上がって来た。

「この調子でいくぞ」

 俺は声を弾ませ、進みだした。

「あ、待ってよ、レオンさん~」
「お、俺たちを置いていくな……」

 慌てたようにマナたちがついてくる。

 と、つい早足になってしまった。
 彼女たちを置き去りにするわけにはいかない。

 俺は振り返り、

 ぐるるるる……!

「また、リザードマンか!」

 マナたちのすぐ後ろだ。
 横の壁の隙間から出てきたんだろうか。

「ひ、ひいっ……」

 マナたちが硬直していた。
 突然のモンスター出現に反応できてない。

 俺は慌てて走り出した。

 くそっ、少し距離が遠い──。
 向こうまでまだ5メートル近くある。

 さすがに拳も蹴りも届かない。

「だったら──」

 集中する。

 いちおう、冒険者学校で基礎的な仕組みだけは習っていた。

『この力』は、素質がある者にしか使えない。
 俺にその素質があるかどうかは分からない。

 だけど、今マナたちを助けるには、これが一番だ。

 だから──頼むぞ、俺の中に眠る力。

 竜王の、力よ!

「【ウィンドカッター】!」

 右手を突き出し、叫ぶ。
 同時に、ごうっ、と音を立てて、右手から風の刃が飛び出した。

「できた──」

 風系魔法【ウィンドカッター】。

 ざしゅっ!

 俺が放った風の刃が、リザードマンの首を一撃で切り落とした。

 どうやら、俺は魔法も扱えるらしい。

 レベル1000の竜の戦士の力──。

 まだまだ、俺が知らない能力が潜んでいるのかもしれないな。