クーデリアに続いてマナも控室を出て行った。
俺はその後を追い、直近の出場予定者用の観戦室に行く。
ここから現在行われている試合を見ることができるのだ。
「一回戦――マナ・スカーレットVSクーデリア・スタフォード!」
審判が高らかに告げた。
「さっきは言い返したけど……いきなり学内ランキング2位が相手なんだよな……」
俺は試合場を注視する。
マナは緊張の面持ちだった。
いくら強くなったといっても、相手が相手だ。
不安や緊張はどうしても感じてしまうだろう。
「がんばれ、マナ……!」
俺はごくりと息を飲んだ。
「パワーレベリングの効果を信じろ。今の君は学内最強だ」
「レオン……さん……」
お、マナがこっちを見た。
「いけ」
グッと親指を立てる俺。
こくん、とうなずくマナ。
そして――試合が始まった。
「ふん、最近騒がれているパーティの一人だってことは知ってるわよ。一通りの情報も仕入れてきたわ」
クーデリアがマナをにらんだ。
「言っておくけど、すごいのはあんたじゃなくてレオンってオッサンだけでしょ。あんたはそれにくっついてるだけの金魚のフンよ」
「うう……」
マナはやはり気圧されている。
まあ、ちょっと前なら実力的に天地の開きがあった相手だ。
精神的に飲みこまれるのは仕方ない。
「容赦はしないわよ」
クーデリアが大剣を構えた。
屈強な大男でも持ち上げるのに苦労しそうなほどの、巨大な剣。
ほとんど鉄板といっていいサイズのそれを、クーデリアは片手で軽々と担ぎ上げた。
あの細腕では絶対に不可能な芸当だ。
おそらくは、なんらかのスキル効果によるものだろう。
「パッシブスキル【金剛力】」
クーデリアが語った。
「パッシブ……スキル?」
「常時展開されるタイプのレアスキルよ。これの恩恵で、私は常人の数倍の筋力を常に発揮できるの」
ぶんっ、と大剣を頭上で振り回しながら、クーデリアが語った。
「あんたのクラスも剣士なんでしょう。剣で決着をつけましょうか」
「うう……」
マナが長剣を構える。
クーデリアの剣に比べると、まるで枝切れである。
「来ないのなら、こっちから行くわよ――剣術スキル【剛剣】」
告げて、突進するクーデリア。
「はああああああっ!」
裂帛の気合いとともに斬撃が繰り出される。
「ひいいっ」
マナは大きくバックステップして、かろうじて避けた。
ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
狙いを外れたクーデリアの大剣が床に叩きつけられ、大音響とともに床の一部が砕け散った。
ほとんどクレーターのようになっている。
「すごい……」
俺は息を飲んだ。
斬撃というより、爆撃である。
「怖いでしょ。降参する?」
クーデリアが大剣を突き付けた。
もしかしたら、今の一撃はわざと外したのかもしれない。
マナをビビらせるために。
そして、降参させるために。
いわば、脅しだ。
「弱者は強者に跪くのみ。この学校でも、そして冒険者の世界に行った後もね」
「…………」
「あんたは弱い。だから、できることは一つだけ。私の前に屈することよ」
「――違うよ」
マナがまっすぐにクーデリアを見つめた。
「あたしは弱かった。でも変わったんだ」
剣を、抜く。
その刀身にまばゆいオーラが宿った。
「変わりたい、っていう願いをレオンさんが叶えてくれた」
一歩、マナが踏み出す。
「あたしはその成果をレオンさんに見せるんだ。強くなったところを――」
クーデリアは反応できていない。
そのみぞおちに、
「見せるんだ!」
一閃。
マナの一撃を視認できたのは、おそらく俺だけだろう。
「かはっ……!?」
小さな苦鳴とともに、クーデリアが崩れ落ちた。
「えっ? えっ?」
審判も、そして見ていた生徒のほぼ全員が戸惑いの声を漏らす。
「し、勝者……マナ・スカーレット……」
「勝った――」
マナがふうっと息をつく。
見事な一撃だった。
「速い……それに、威力のコントロールも完璧だな」
今のはクーデリアがぎりぎりKOされる程度まで力を落とした一撃だ。
もしも今のマナが渾身の一撃を食らわせたら、対戦相手は少なくとも大怪我をするだろう。
下手をすると死人が出る。
いくら模擬戦用のダメージ軽減魔導装置がついている試合場とはいえ……。
「強くなったんだな、マナ。力も、心も」
なんだか、俺まで嬉しくなった。
うん、すごく嬉しい。
「よし、俺も続くぞ。見ててくれよ、マナ――」
あらためて、俺の中に闘志がどんどんと湧き上がってきた。
俺はその後を追い、直近の出場予定者用の観戦室に行く。
ここから現在行われている試合を見ることができるのだ。
「一回戦――マナ・スカーレットVSクーデリア・スタフォード!」
審判が高らかに告げた。
「さっきは言い返したけど……いきなり学内ランキング2位が相手なんだよな……」
俺は試合場を注視する。
マナは緊張の面持ちだった。
いくら強くなったといっても、相手が相手だ。
不安や緊張はどうしても感じてしまうだろう。
「がんばれ、マナ……!」
俺はごくりと息を飲んだ。
「パワーレベリングの効果を信じろ。今の君は学内最強だ」
「レオン……さん……」
お、マナがこっちを見た。
「いけ」
グッと親指を立てる俺。
こくん、とうなずくマナ。
そして――試合が始まった。
「ふん、最近騒がれているパーティの一人だってことは知ってるわよ。一通りの情報も仕入れてきたわ」
クーデリアがマナをにらんだ。
「言っておくけど、すごいのはあんたじゃなくてレオンってオッサンだけでしょ。あんたはそれにくっついてるだけの金魚のフンよ」
「うう……」
マナはやはり気圧されている。
まあ、ちょっと前なら実力的に天地の開きがあった相手だ。
精神的に飲みこまれるのは仕方ない。
「容赦はしないわよ」
クーデリアが大剣を構えた。
屈強な大男でも持ち上げるのに苦労しそうなほどの、巨大な剣。
ほとんど鉄板といっていいサイズのそれを、クーデリアは片手で軽々と担ぎ上げた。
あの細腕では絶対に不可能な芸当だ。
おそらくは、なんらかのスキル効果によるものだろう。
「パッシブスキル【金剛力】」
クーデリアが語った。
「パッシブ……スキル?」
「常時展開されるタイプのレアスキルよ。これの恩恵で、私は常人の数倍の筋力を常に発揮できるの」
ぶんっ、と大剣を頭上で振り回しながら、クーデリアが語った。
「あんたのクラスも剣士なんでしょう。剣で決着をつけましょうか」
「うう……」
マナが長剣を構える。
クーデリアの剣に比べると、まるで枝切れである。
「来ないのなら、こっちから行くわよ――剣術スキル【剛剣】」
告げて、突進するクーデリア。
「はああああああっ!」
裂帛の気合いとともに斬撃が繰り出される。
「ひいいっ」
マナは大きくバックステップして、かろうじて避けた。
ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
狙いを外れたクーデリアの大剣が床に叩きつけられ、大音響とともに床の一部が砕け散った。
ほとんどクレーターのようになっている。
「すごい……」
俺は息を飲んだ。
斬撃というより、爆撃である。
「怖いでしょ。降参する?」
クーデリアが大剣を突き付けた。
もしかしたら、今の一撃はわざと外したのかもしれない。
マナをビビらせるために。
そして、降参させるために。
いわば、脅しだ。
「弱者は強者に跪くのみ。この学校でも、そして冒険者の世界に行った後もね」
「…………」
「あんたは弱い。だから、できることは一つだけ。私の前に屈することよ」
「――違うよ」
マナがまっすぐにクーデリアを見つめた。
「あたしは弱かった。でも変わったんだ」
剣を、抜く。
その刀身にまばゆいオーラが宿った。
「変わりたい、っていう願いをレオンさんが叶えてくれた」
一歩、マナが踏み出す。
「あたしはその成果をレオンさんに見せるんだ。強くなったところを――」
クーデリアは反応できていない。
そのみぞおちに、
「見せるんだ!」
一閃。
マナの一撃を視認できたのは、おそらく俺だけだろう。
「かはっ……!?」
小さな苦鳴とともに、クーデリアが崩れ落ちた。
「えっ? えっ?」
審判も、そして見ていた生徒のほぼ全員が戸惑いの声を漏らす。
「し、勝者……マナ・スカーレット……」
「勝った――」
マナがふうっと息をつく。
見事な一撃だった。
「速い……それに、威力のコントロールも完璧だな」
今のはクーデリアがぎりぎりKOされる程度まで力を落とした一撃だ。
もしも今のマナが渾身の一撃を食らわせたら、対戦相手は少なくとも大怪我をするだろう。
下手をすると死人が出る。
いくら模擬戦用のダメージ軽減魔導装置がついている試合場とはいえ……。
「強くなったんだな、マナ。力も、心も」
なんだか、俺まで嬉しくなった。
うん、すごく嬉しい。
「よし、俺も続くぞ。見ててくれよ、マナ――」
あらためて、俺の中に闘志がどんどんと湧き上がってきた。