「あれ? 人数が減ってる……?」
教室に行くと机の数が三つ四つ減っていた。
どうやら、また中年組が何人か辞めたようだ。
「なんだ、まだ辞めてないのか、オッサン?」
ジェイルがやって来た。
中年組が辞めた元凶は──中心人物は、間違いなくこいつだ。
「俺は辞めない。必ず冒険者になってみせるよ」
言い切る俺。
「ふん、三日後に生徒同士での対戦形式の授業があるよな? そこでお前をボコボコに叩きのめしてやる。いつもよりも念入りにだ」
ジェイルがニヤリと笑った。
「どうせだから、クラスの女子たちにも見てもらおう。お前が無様に負けるところを」
心の底から嬉しそうな笑顔だった。
単に俺が気に入らないから──じゃねーな、これは。
きっと自分より弱い者を叩きのめすのが大好きなんだ。
恵まれた素質。
剣と魔法における高い才能。
それらを振るって、弱者をいたぶるのが大好きなんだ。
「おい、聞いてるのか、オッサン。お前みたいな社会のゴミを俺が掃除してやるってんだよ。冒険者は、お前みたいな半端者がなっていい職業じゃない。選ばれた真の強者だけがその道を行けるんだ」
「ゴミ? それはお前だろ」
俺はジェイルをにらんだ。
「なんだと、てめぇ……!」
「おっと、ここでやりあうのはまずくないか? 生徒同士の私闘は厳禁。下手すりゃ退学だぞ」
「……ちっ」
今までの俺なら、言われっ放しだっただろう。
でも、もう違うんだ。
俺はこれから生まれ変わってみせる。
まずは、ジェイルに勝って、その証を立てる──。
胸の中に強い決意がみなぎった。
昼休み。
仲の良い生徒同士は一緒に昼食を食べているが、俺はいつも一人だった。
ぼっち学園生活もすっかり慣れてしまった。
べ、別に寂しくなんかないからな!
と、
「あの、朝のやり取りを見てました。大丈夫なんですか、レオンさん?」
俺に話しかけてきたのは、一人の女子生徒だった。
柔和な笑みをたたえた美貌にハッとなる。
背中辺りまであるセミロングの赤い髪やオレンジ色の瞳が、その美貌を彩っている。
「えっと……」
「マナ・スカーレットと申します。こうしてお話するのは初めてですね」
彼女……マナは丁寧に一礼した。
俺を侮蔑の表情で見たり、あからさまに無視する女子生徒が大半の中、こんなふうに丁寧に接してくれる女子は初めてだ。
ちょっと感動してしまう。
「ど、どうも」
俺は緊張気味に答えた。
「レオン・ブルーマリン、です」
「敬語なんていいですよ。レオンさんの方が私よりずっと年上ですし」
マナは見たところ、15歳前後だろうか。
俺の半分くらいの年齢である。
「じゃあ、俺にも敬語はいいよ。同じ生徒だろ」
「でも……」
「その方が話しやすいし」
「……分かりまし──うん、分かった」
マナが明るく笑う。
「それで、本題なんだけど……あまりジェイル君にかかわらない方がいいと思うの。レオンさんは入学したばかりで知らないかもしれないけど、彼は授業にかこつけて何人もの生徒を病院送りにしてる。再起不能になった生徒もいるよ」
「まじか。そんな奴、退学にならないのか」
「冒険者は強さがすべて。それに、彼は上級冒険者候補だもの」
マナがため息をついた。
「学園の方が手放さないよ。代表選手候補だし、彼が対抗戦で好成績を出せば、学園自体の宣伝にもなるし」
「ひょっとして……俺を心配してくれて、声をかけてくれたのか」
俺の質問に、マナはこくりとうなずいた。
いい子だなぁ……。
「ありがとう、気を付けるよ」
俺はマナにそう言った。
……ただ、内心での決意は揺らがない。
そんなひどい奴なら、なおさら俺が打ちのめしてやる──。
むしろ闘志がいっそう燃え上がっていた。
教室に行くと机の数が三つ四つ減っていた。
どうやら、また中年組が何人か辞めたようだ。
「なんだ、まだ辞めてないのか、オッサン?」
ジェイルがやって来た。
中年組が辞めた元凶は──中心人物は、間違いなくこいつだ。
「俺は辞めない。必ず冒険者になってみせるよ」
言い切る俺。
「ふん、三日後に生徒同士での対戦形式の授業があるよな? そこでお前をボコボコに叩きのめしてやる。いつもよりも念入りにだ」
ジェイルがニヤリと笑った。
「どうせだから、クラスの女子たちにも見てもらおう。お前が無様に負けるところを」
心の底から嬉しそうな笑顔だった。
単に俺が気に入らないから──じゃねーな、これは。
きっと自分より弱い者を叩きのめすのが大好きなんだ。
恵まれた素質。
剣と魔法における高い才能。
それらを振るって、弱者をいたぶるのが大好きなんだ。
「おい、聞いてるのか、オッサン。お前みたいな社会のゴミを俺が掃除してやるってんだよ。冒険者は、お前みたいな半端者がなっていい職業じゃない。選ばれた真の強者だけがその道を行けるんだ」
「ゴミ? それはお前だろ」
俺はジェイルをにらんだ。
「なんだと、てめぇ……!」
「おっと、ここでやりあうのはまずくないか? 生徒同士の私闘は厳禁。下手すりゃ退学だぞ」
「……ちっ」
今までの俺なら、言われっ放しだっただろう。
でも、もう違うんだ。
俺はこれから生まれ変わってみせる。
まずは、ジェイルに勝って、その証を立てる──。
胸の中に強い決意がみなぎった。
昼休み。
仲の良い生徒同士は一緒に昼食を食べているが、俺はいつも一人だった。
ぼっち学園生活もすっかり慣れてしまった。
べ、別に寂しくなんかないからな!
と、
「あの、朝のやり取りを見てました。大丈夫なんですか、レオンさん?」
俺に話しかけてきたのは、一人の女子生徒だった。
柔和な笑みをたたえた美貌にハッとなる。
背中辺りまであるセミロングの赤い髪やオレンジ色の瞳が、その美貌を彩っている。
「えっと……」
「マナ・スカーレットと申します。こうしてお話するのは初めてですね」
彼女……マナは丁寧に一礼した。
俺を侮蔑の表情で見たり、あからさまに無視する女子生徒が大半の中、こんなふうに丁寧に接してくれる女子は初めてだ。
ちょっと感動してしまう。
「ど、どうも」
俺は緊張気味に答えた。
「レオン・ブルーマリン、です」
「敬語なんていいですよ。レオンさんの方が私よりずっと年上ですし」
マナは見たところ、15歳前後だろうか。
俺の半分くらいの年齢である。
「じゃあ、俺にも敬語はいいよ。同じ生徒だろ」
「でも……」
「その方が話しやすいし」
「……分かりまし──うん、分かった」
マナが明るく笑う。
「それで、本題なんだけど……あまりジェイル君にかかわらない方がいいと思うの。レオンさんは入学したばかりで知らないかもしれないけど、彼は授業にかこつけて何人もの生徒を病院送りにしてる。再起不能になった生徒もいるよ」
「まじか。そんな奴、退学にならないのか」
「冒険者は強さがすべて。それに、彼は上級冒険者候補だもの」
マナがため息をついた。
「学園の方が手放さないよ。代表選手候補だし、彼が対抗戦で好成績を出せば、学園自体の宣伝にもなるし」
「ひょっとして……俺を心配してくれて、声をかけてくれたのか」
俺の質問に、マナはこくりとうなずいた。
いい子だなぁ……。
「ありがとう、気を付けるよ」
俺はマナにそう言った。
……ただ、内心での決意は揺らがない。
そんなひどい奴なら、なおさら俺が打ちのめしてやる──。
むしろ闘志がいっそう燃え上がっていた。