「あたし、もっと強くなれるの……?」
「ああ。『ジェイルと同レベル』でマナが満足しているならいいけど、それ以上を求めるなら――」
「強くなれるなら……なりたい」

 マナが俺を見つめた。

 目に真剣な光をたたえて。

「じゃあ、さっそく放課後にやってみよう」
「やった!」

 マナが嬉しそうに言った。



 放課後になった。

 ここは学校の裏庭だ。
 マナと待ち合わせしてパワーレベリングをする予定だった。

 訓練場でもいいんだけど、彼女もだいぶ強くなってきたし、スキルの威力がどれくらい上がるか分からないからな。

 人けがあまりないここで、色々と試してみたい。

 ぎゅいい。
 スライムのヒスイも一緒である。

「あれ? お前、なんか妙にまとわりついてくるな」

 俺の周囲を回りながら、ぴとっとくっついてくるヒスイ。
 いつもより懐かれてる感じだ。

 ちょっとかわいいな、とか思ってしまった。

「二日も放っておかれたので寂しかったのです」
「悪い。演習があったりして、放課後に会いに来れなかったんだ」
「今日はお会いできて嬉しいです」

 ぴょんぴょん飛ぶヒスイ。
 うんうん、和むなぁ。
 と、

「お待たせ~」

 マナがやって来た。

「あ、ヒスイちゃんだ」
「こんにちは、です」

 ヒスイが頭を下げた。

「ふふ、こんにちはっ」

 マナがにっこりと答える。

「じゃあ、さっそく始めるか」
「よろしくお願いしまーす」
「元気でよろしい」
「あ、ちょっと先生っぽい態度だね、レオンさん」

 マナが微笑む。

「パワーレベリングって相手を強くする術だし、なんか気持ちが『先生モード』になるっていうか……別に、俺がマナに何かを教えるってわけじゃないんだけど」
「なんとなく分かる気がする」

 と、マナ。

「前回みたいに、ちょっとずつレベルを上げていく形でやろうと思う。いいか?」
「レオンさんに任せる」
「よし、まずはレベルを五つ上げてみるか――」

 言ったところで、突然悪寒が走った。

 ぞわり。

 全身が総毛立つ感じだ。

「……?」

 なんだ、今の感覚は――。
 どこからか強烈なプレッシャーを感じたぞ。

「どうかしたの、レオンさん?」

 マナが怪訝そうにたずねた。

「……いや、なんでもないんだ」

 気のせいだろうか。
 周囲を見回しても誰もいないし。

「パワーレベリングを続けようか」

    ※

『彼』はその男をじっと見つめていた。

「へえ、竜の気配を持つ人間か……」

 それも信じられないほど強大な気配だ。

 まるで――竜王に匹敵するほどに。

「一体、何者……? ちょっと近づいてみるか」

『彼』の口元に笑みが浮かぶ。

「あの男がきっかけで――竜たちが目覚めるかもしれないね」

 そんな予感にワクワクとしながら。