「おお、戻ってきた!」
「早すぎないか……?」
「まさか、あれって――ダンジョンを全部制覇したのか!?」

 ダンジョンから戻ると、みんなが俺たちに注目していた。

「ダンジョンの最下層まで踏破しました。ボスも倒してきました。これ、素材です」

 と、ゴーレムの破片を教官に差し出す俺。

「ボス……?」

 教官は眉を寄せた。

「最下層のボスとして設置したのは、パワードオーガだ。これはゴーレム系のモンスターに見えるが……?」
「パワードオーガ?」

 俺は首をかしげた後、ハッとなった。
 竜人型ゴーレムと戦う前に現れた五メートルくらいの巨人のことだろうか?

「うーん……」

 一方の教官は俺が渡したゴーレムの素材を見てうなっていた。

「どうかしましたか?」
「いや、こんなモンスターは演習用ダンジョンに置いていないはずなんだ……」

 教官が困惑している。

「ダンジョン内のモンスターは一定ランク以下の野生のモンスターと、特殊な魔法兵器タイプだけなんだ。このゴーレムは明らかに規定ランクを超えているし、我々が置いた魔法兵器タイプでもない」

 と、教官。

「どこかから迷いこんだのか、一体……?」

 あのゴーレムは学園が用意したものじゃなかった。
 じゃあ、何者なんだろうか。

「竜の眷属、か」

 俺は小さくつぶやいた。



 翌日の登校時――。

「あいつらが上位難度のダンジョンを踏破したパーティか……」
「特にあのレオンってやつがすごいらしい……」
「学年トップクラスのジェイルもいるんだったな……」
「マナっていうのは誰だ? 聞いたことないぞ……」
「噂じゃ、あのジェイルと互角の剣技らしいぞ……」

 俺とマナが学内を歩いていると、周囲からそんなざわめきが聞こえてきた。

 この間のクエストを経て、さらに有名人になってしまった。
 今度は俺だけじゃなくマナもだ。

「な、なんか噂されるのって、くすぐったいね」

 マナが苦笑交じりに言った。

「自分のことを言われてるのに、自分のことじゃないような……フワフワして現実感が薄い感じ……」
「分かる」

 俺もちょっと前はそうだった。
 今はさすがに慣れてきたけど。

「レオンさんのおかげだね」

 マナが俺を見つめた。

「あたし、冒険者としてやっていけるのか自信がなかったの。学校を卒業できるかすら怪しいな、って」
「マナ……」
「でも、レオンさんのおかげで自信がついたよ。ありがとねっ」

 にっこりと微笑む。
 キラキラした笑顔だった。

 見ているだけで、俺まで嬉しくなってくる。

「役に立てたんならよかった」
「役に立つどころじゃないよ! あたしの人生変わったもん!」

 マナがぐっと拳を握る。

「今度はあたしがレオンさんの力になる番――と言いたいところだけど、レオンさんは自力でだいたいなんとかしちゃうよね」
「はは、そういうのはいいよ」
「ううん。何かお礼がしたいの。いつか必ず恩返しするからねっ」
「いいっていいって」

 俺は苦笑しながら辞退する。

「それより、パワーレベリングはまだ途中だからな。マナにはもっともっと強くなってもらう」
「えっ?」

 マナが驚いたように自分自身を指さした。