おおおんっ。

 ゴーレムが咆哮した。
 ふたたび体をひねり、尾を叩きつけてくる。

 尾の先端が赤く発光していた。
 どうやら攻撃スキルの一種らしい。

 おそらくは打撃系のスキル――。
 まともに食らえば、ジェイルの二の舞だ。

 俺は地面を蹴って、大きく跳び上がった。

 スキルじゃなく、単なるジャンプ。
 だがレベル1000の俺のステータスは、素の運動能力において人間の限界値をはるかに超えている。

 十メートル以上の高さを軽々跳び上がると、俺は空中からゴーレムの頭上に向かって仕掛けた。

「くらえ――【剛剣】!」

 ジェイルやマナと同じ剣術スキルである。
 俺のステータスで繰り出す【剛剣】は、二人とはけた違いの威力を持つ。

 ざしゅっ……!

 斬撃が、ゴーレムの頭部を深々と切り裂いた。

「いける……!」

 着地した俺は剣を手に、ゴーレムを見据えた。
 さすがに一撃で致命傷とはいかなかったが、俺の攻撃は奴の岩石装甲を問題なく切り裂けるようだ。


「次で――決める」

 俺が気合いを入れ直したそのときだった。

「ほう、竜の眷属……か……」

 突然、竜人型ゴーレムが口を開いた。

「こいつ、しゃべれるのか……?」

 驚く俺。

「長い間、人間どもの相手ばかりで退屈だったが……こんな日が来るとは……」

 竜人型ゴーレムが口の端を吊り上げる。

「お前ならばできるかもしれん……我が主の……竜王様の封印を、解くことが……」
「えっ」
「竜の眷属が相手であれば――我も本気を出そう」

 ぎ……ぎぎぎ……。

 ゴーレムの全身が震え、装甲が内側から開いていく。
 露出した体は、まるで血管のように赤い魔力のラインが縦横に巡っていた。

「ぐっ……!」

 異常な魔力を感じる。

「こっちも気合を入れてやらないとまずいな……」

 俺は剣を鞘に納めると、両手を腰だめに構えた。

「しょうがない……ちょっと威力がありすぎるかもしれないけど」

 覚悟を決めた。
 俺の手持ちの中で、もっとも高威力のスキルの一つ。

『あれ』を――ぶっ放してやる!