冴えないおっさん、竜王のうっかりミスでレベル1000になり、冒険者学校を成り上がり無双

「ジェイルの魔法が封じられた……!?」

 モンスターは勝ち誇ったように両手を突き出す。

 魔法攻撃の構えだ。
 対するジェイルは魔法で対抗できない。

「ちっ、なら剣で――」
「【ディーブラスト】」

 モンスターが魔法を放つ方が速かった。

 ばきんっ。

 剣をへし折られるジェイル。

「しまっ……」

 ジェイルは痛恨の表情だった。

 これでは丸腰だ――。
 モンスターがゆっくりと近づいてくる。

「く、くそ、こんなはずじゃ……」

 ジェイルの顔は青ざめていた。

 魔法を封じられ、剣も失ったジェイルに戦う手段はない。
 しょうがない、助けるか。

 俺が行こうとした、そのとき、

「させない――」

 マナが突進した。

 速いっ!

 さっきのジェイルに匹敵するスピードである。

「よし、パワーレベリングの効果が出てるぞ」

 俺はグッと拳を握り締めた。

「ええーいっ!」

 マナはそのまま剣を叩きつけた。

 ぐおおおんっ。

 悲鳴のような声を上げて、後ずさるモンスター。

「逃がすかよ!」

 すかさず、ジェイルが走った。
 すでに予備の剣を抜いている。

 接近戦では分が悪いと悟ったのか、後退するモンスター。

 が、そこにはマナが待ち構えていた。
 前後をジェイルとマナで挟まれた格好だ。

 逃げ場はない。

「剣術スキル――」
「【剛剣】!」

 二人が同時にスキルを発動。
 モンスターを四つに断ち割った。

「やったな、マナ、ジェイル!」
「すごーい!」
「えっ、マナさんってあんなに強いんですか!?」

 俺たちは歓声と驚きの声を上げた。

「……くそ、こんな奴に助けられるとは」
「ジェイル、マナに礼を言ったらどうだ?」

 悔しげなジェイルを諭す俺。

「う、うるせ、俺は――」
「マナがいなければ危なかったぞ」
「……くそっ」

 俺が再度諭すと、ジェイルはうつむいて舌打ちした。

「助かった。感謝する……マナ・スカーレット」
「えへへ、どういたしまして」
「……ちっ」

 微笑むマナに、ジェイルは悔しげにまた舌打ちした。

 態度はあいかわらずだが、素直に他人に礼を言えたことは評価されるべきことだろう。
 ジェイルにもそういう一面があったのか、あるいは――。

「よし、先へ進もう」

 俺はみんなに呼びかけた。