俺はマナと向かい合った。

 うっ……。
 いざこうして至近距離で向かい合うと、けっこう緊張する。

 何せマナはかなりの美少女だからな。

 いや、落ち着け俺。
 彼女は十代だぞ。
 アラサーの俺がドキドキしていい相手じゃない。

「すうはあ、すうはあ」

 深呼吸だ……ついでに素数とか数えて落ち着いてみるか。

「? どうしたの、レオンさん?」

 マナはキョトンとした表情だった。

「はっ!? よ、邪まなことなんて考えてないぞっ!?」
「???」

 マナはますますキョトン顔である。

 ……いいかげんに落ち着こう、俺。

「『力』を注ぐからな。リラックスしてくれ」

 俺はマナの手を取った。

「う、うん……」

 彼女は緊張気味の表情だ。

「力が入ってるぞ」
「えっ、あ、ごめんなさい……」

 言いながら、マナはますます全身をこわばらせている。
 どうも緊張するタイプらしいな。

 リラックスしてくれ、って言ったことで、かえって緊張が高まったのか。

「よし。じゃあ、逆に力を入れてみよう」
「えっ」
「気合いだ」

 俺はマナを見つめて、ぐっと拳を握る。

「気合い……」

 ごくりと喉を鳴らすマナ。

「じゃあ、やってみる……ふおおおお……」

 気合いの声が響く。
 と言っても、可愛らしいものだが。

 中腰になり、右手で俺の手を握ったまま、左手は拳を形作っている。

「はああああああ……」

 さらに気合いの声。

「ぷはー……つかれた」

 急にその力が抜けた。

 よし、今だ!

「『力』を――注入する! 【レベルアッパー】!」

 俺は一気に『力』を注いだ。