「スライムの名前……うーん……」

 いざ考えてみると、なかなか難しいな、名付けって。
 いや、というか――、

「お前はどんな名前がいいんだ? 希望があったら言ってくれ」

 まずこいつに聞くべきだったな。

「私には考えつかないのでマスター、お願いします」

 ぐにっ、と体を二つ折りするスライム。

 いつもとは体の折り曲げ方の角度が違う。
 もしかしたら『礼』をしたんだろうか。

 なかなか器用な奴だ。

「むむむ……悩むな。そうだ、マナにも聞いてみるか」

 俺は彼女の助けを仰ぐことにした。



「――というわけで、助けを借りたい」

 俺はマナを呼び出した。
 ここは校舎裏にある小さな庭園だ。

「スライムの名前……?」

 マナがきょとんと首をかしげた。

「レオンさん、スライムを手なずけてるんだね。すごい」
「初めまして、マナさん」

 ぐにっ、と体を二つ折りするスライム。
 やはり礼をしているようだ。

「初めまして。マナでーす」

 彼女はにっこりと礼を返した。

「名前か―……うーん、悩むねー」

 と、首をひねるマナ。

「スライムだからスライム子ってのはどうだ?」

 俺が提案する。

「……スライムの下に『子』をつけただけじゃない」

 マナはジト目になった。

「安直だけど、いいネーミングじゃないか?」
「レオンさんって強いけどネーミングセンスは、ちょっと……」
「むむむ……そうか」
「綺麗なヒスイ色をしてるから……ヒスイちゃんとか」
「お前もけっこう安直なネーミングセンスだな」
「あ、そうかも」
「でも、ヒスイってのはいい響きだ」

 ぐにっ、ぐににににっ。

 スライムが何度も体を折り曲げた。
 力強くうなずいている感じがするぞ。

「ってことは、気に入ったのか? ヒスイって名前」

 ぐにっ、ぐににににっ。

「おお、それなら――お前は今日からヒスイだ!」
「ありがとうございます! 嬉しいです!」

 嬉しそうなスライム――あらため、ヒスイ。

「いや、しゃべれるんだから、最初から言葉で言ってくれよ」

 俺は思わず苦笑した。

「えへへ、まだ慣れてなくて」
「それもそうか。じゃあ、これからどんどん慣れていこう。いっぱい話そう」
「はい、嬉しいですっ」

 可愛いな、こいつ。

「あらためて、よろしくなヒスイ。あ、そういえば、俺も名乗ってなかったか……レオン・ブルーマリンだ」
「よろしくお願いしますね、レオン様」

 ヒスイが言った。