「レオン・ブルーマリン──種族・人間、レベルは1000に到達してるわね。人間としては極限といってもいい能力の持ち主」

 巫女が俺を見て微笑んだ。

「世界中を見渡しても、あなたに勝てる人間がいるかどうか。『勇者』アーバイン・ラウや『無双傭兵』ドルマ・レイス、『騎士の中の騎士』ガルダ・バールハイト……今代の名だたる英雄たちでさえ、あなたには敵わないかもしれない」

 彼女が挙げた名前は、いずれも世界最高の戦士たちだ。

 俺が、そんな人たちより強いっていうのか。
 確かに、レベル1000っていうのは、とんでもない数字だとは思うけれど。

「くくく、まだ己が身に宿った力を過小評価するか? それは世界の命運すら左右できる力だぞ、人間よ」

 暗黒竜王が笑う。

「『導きの巫女』の能力──【竜王級鑑定スキル】はあらゆる事象を正確に見抜く。お前には、それだけの力が宿っているのだ」
「俺の、力……」
「竜から与えられ、そしてお前のものとなった力だ」

 暗黒竜王が告げる。

「だが、力はしょせん力にすぎん。使いこなすのは、お前自身だ」

 ──なるほど。

 確かに、俺は莫大な力を得た。
 だけど、それは暴走させないように制御するだけで精いっぱい。

 普段使うときは、常に手加減を考えていた。
 でも、この場では手加減なんて必要ない。

 全力を尽くし、その中で力の扱い方を覚えるんだ。
 リンが訓練相手に暗黒竜王を選んだ真の意味は──きっとそこにある。

「じゃあ、あらためて。よろしく頼むよ、竜王サマ」
「ふん、かかってくるがいい」

 暗黒竜王はニヤリと笑ったようだった。

 ──集中。
 自分の中に宿る熱いエネルギー……魔力。

 そいつは、今は腹の底あたりで燃え盛っている感覚だ。
 それをより燃え上がらせつつ、右手に向かって集めていくイメージ。

 すべてを、右手に。
 最後のひとかけらまで、右手に。

 集め、溜め、一つの形にして放つ。

「食らえ、暗黒竜王!」

 俺は右手を突き出した。

「【竜王級火焔弾(ドラゴニックファイア)】!」

 気合いとともに、炎が渦となってほとばしる。
 暗黒竜王はすかさず青白いブレスを吐き出した。

 さっき上級火炎魔法をあっさり吹き散らした竜王のブレス──【滅びの光芒】。

 ばしゅぅぅぅぅっ……!

 が、今度は吹き散らされたのは【滅びの光芒】の方だった。
 俺が放った火炎は、さらに勢いを増して進んでいく。

「ほう!? 我がブレスを打ち破ったか!」

 叫ぶ暗黒竜王。

 いけるぞ。
 俺が全力を振り絞った魔法は、竜王クラスにも通用する。

 このまま──奴に一撃を与えてやる!