「暗黒竜王……?」
なんだか仰々しい名前だな。
それに暗黒って言葉が、いかにも悪の竜王って感じが漂ってる。
「まさか、いきなり取って食われたりしないだろうな?」
「あはは、大丈夫だよ。彼は、敵に対しては容赦ないけど、味方には優しいから」
と、リン。
「じゃあ、『内なる境界』に移動しようか」
「内なる……なんだって?」
「一種の異空間だね。僕の意識内に生み出される、こことは異なる位相空間──まあ、訓練場だと思ってくれればいいよ」
リンが説明してくれたが、今一つ意味が分からなかった。
まあ、訓練用の場所に移動するってことだけは理解できたが。
「じゃあ、いくよ」
ぱちん、とリンが指を鳴らす。
──次の瞬間、視界が切り替わっていた。
黒い空。
白い地面。
見渡すかぎり、黒と白の二色に塗り分けられた世界が広がっている。
「ここは──」
「さっき言った『内なる境界』さ」
リンが説明する。
「じゃあ、ここが特訓場所か……」
「ああ。さっそく特訓といこうか」
微笑むリン。
「その『暗黒竜王』ってやつがここに来るのか?」
「いや、実は彼の『本体』を呼び出すことはできないんだ」
俺の問いにリンが答えた。
「『暗黒竜王』は太古の戦いで肉体を滅ぼされ、意識だけが存在してる状態。数百年から数千年に一度くらいのペースで、依り代を見つけてはよみがえったりするけどね」
リンが言った。
「だから今から呼ぶのは、『暗黒竜王』そのものじゃない。僕の記憶にあるかつての彼だ」
「お前の、記憶にある……」
「だから、僕の意識内空間に移動したのさ。ここなら、僕が記憶しているものをすべて実体化できる。たとえ竜王クラスといえども、簡単に──」
言うなり、眼前が大きく揺らいだ。
その向こうから巨大な何かが出現する。
「で、でかい……!」
身長は100メートルを超えてるんじゃないだろうか。
「我は暗黒竜王。ふん、久しぶりに呼び出されたな、水燐竜王よ」
「やあ、今日はちょっと君に頼みたいことがあって、出てきてもらったんだ」
リンは臆する様子もなく暗黒竜王に語りかける。
「彼を訓練してやってくれないかな」
「ほう、人間か……しかも、竜の力を宿しているな?」
暗黒竜王がギロリと俺をにらむ。
「俺はリン──水燐竜王から力を分けてもらったんだ。だから竜の力を使える」
説明する俺。
まだちょっと怖いけど、だんたん暗黒竜王のプレッシャーに慣れてきたぞ。
「……ふむ。未だ覚醒には遠そうだが、それでも人間としては破格の強さだな」
暗黒竜王がうなる。
「して、我がその人間に施す特訓とは?」
「パワーレベリングさ」
と、リン。
「彼は仲間の女の子を強くしたいらしくて。君から直々にパワーレベリング法を教わりたいんだ」
「もし頼めるなら……お願いしたい」
俺は暗黒竜王に一礼した。
「……ふむ」
ふたたびうなる暗黒竜王。
果たしてすんなりOKしてもらえるか──。
「本来、我が人間に対して何かを施すなどあり得ぬこと。それを望むなら、相応のものを見せてもらわねばならぬ」
「相応のもの?」
「力だ」
暗黒竜王が静かに告げた。
「我を納得させるだけの力を見せてみろ、人間」
なんだか仰々しい名前だな。
それに暗黒って言葉が、いかにも悪の竜王って感じが漂ってる。
「まさか、いきなり取って食われたりしないだろうな?」
「あはは、大丈夫だよ。彼は、敵に対しては容赦ないけど、味方には優しいから」
と、リン。
「じゃあ、『内なる境界』に移動しようか」
「内なる……なんだって?」
「一種の異空間だね。僕の意識内に生み出される、こことは異なる位相空間──まあ、訓練場だと思ってくれればいいよ」
リンが説明してくれたが、今一つ意味が分からなかった。
まあ、訓練用の場所に移動するってことだけは理解できたが。
「じゃあ、いくよ」
ぱちん、とリンが指を鳴らす。
──次の瞬間、視界が切り替わっていた。
黒い空。
白い地面。
見渡すかぎり、黒と白の二色に塗り分けられた世界が広がっている。
「ここは──」
「さっき言った『内なる境界』さ」
リンが説明する。
「じゃあ、ここが特訓場所か……」
「ああ。さっそく特訓といこうか」
微笑むリン。
「その『暗黒竜王』ってやつがここに来るのか?」
「いや、実は彼の『本体』を呼び出すことはできないんだ」
俺の問いにリンが答えた。
「『暗黒竜王』は太古の戦いで肉体を滅ぼされ、意識だけが存在してる状態。数百年から数千年に一度くらいのペースで、依り代を見つけてはよみがえったりするけどね」
リンが言った。
「だから今から呼ぶのは、『暗黒竜王』そのものじゃない。僕の記憶にあるかつての彼だ」
「お前の、記憶にある……」
「だから、僕の意識内空間に移動したのさ。ここなら、僕が記憶しているものをすべて実体化できる。たとえ竜王クラスといえども、簡単に──」
言うなり、眼前が大きく揺らいだ。
その向こうから巨大な何かが出現する。
「で、でかい……!」
身長は100メートルを超えてるんじゃないだろうか。
「我は暗黒竜王。ふん、久しぶりに呼び出されたな、水燐竜王よ」
「やあ、今日はちょっと君に頼みたいことがあって、出てきてもらったんだ」
リンは臆する様子もなく暗黒竜王に語りかける。
「彼を訓練してやってくれないかな」
「ほう、人間か……しかも、竜の力を宿しているな?」
暗黒竜王がギロリと俺をにらむ。
「俺はリン──水燐竜王から力を分けてもらったんだ。だから竜の力を使える」
説明する俺。
まだちょっと怖いけど、だんたん暗黒竜王のプレッシャーに慣れてきたぞ。
「……ふむ。未だ覚醒には遠そうだが、それでも人間としては破格の強さだな」
暗黒竜王がうなる。
「して、我がその人間に施す特訓とは?」
「パワーレベリングさ」
と、リン。
「彼は仲間の女の子を強くしたいらしくて。君から直々にパワーレベリング法を教わりたいんだ」
「もし頼めるなら……お願いしたい」
俺は暗黒竜王に一礼した。
「……ふむ」
ふたたびうなる暗黒竜王。
果たしてすんなりOKしてもらえるか──。
「本来、我が人間に対して何かを施すなどあり得ぬこと。それを望むなら、相応のものを見せてもらわねばならぬ」
「相応のもの?」
「力だ」
暗黒竜王が静かに告げた。
「我を納得させるだけの力を見せてみろ、人間」